2024年11月21日(木)

科学で斬るスポーツ

2018年4月5日

第5の回転軸を生かせるか

図3 投球動作における5つの回転軸。腰、手首、肘、手首、そして足首

 図3を見て欲しい。松坂の投球フォームには、ボールに強い力を伝えるいくつもの回転軸がある。第1の腰、第2の肩に続き、第3の回転軸に特徴があるという。肘の回転軸である。当然、並の投手にもあるが、松坂や田中、ダルビッシュの特徴は肘を最大限に後ろに引いた姿勢(レイバック姿勢)で、腕と地面が平行になるくらい肩甲骨を反っている点にある。この姿勢は、肘の支点(回転軸)から前腕がバッターに向かって直線的に振られるため、スピードとコントロールがつけやすいという利点がある。前腕が水平になるのは、体の柔らかさもあるが、上腕(二の腕)の加速が大きい証拠であり、剛速球投手の証明である。

 この後、第4の回転軸である手首でボールがリリースでされる。石橋さんは、もう一つ松坂ならではの回転軸があるという。「正確に言えば、西武時代、移籍当初のレッドソックス時代にはあったということです」と話す。

 それが第5の足首の回転軸である。松坂は大きなステップが特長だった。大きなステップで、軸足の右足の重心は低く沈み込み、リリースポイントでは、右膝、腰、股関節、左膝、足首を結んだ線が「M字」になっていた。膝、足首などの下半身で体をリードし、腕を体の前で強く振っていたといえる。この際、第5の足首を回転させ、大腿部の内側の内転筋の力で爆発的な腕の振りを実現していた、と分析する。

 その象徴が、西武時代によく見られたマウンド上での姿だ。それを表したのが下のイラスト。球を投げ終わった後、右足は高く跳ね上がり、軸足のお尻が前方に向くほど下半身が回転していることがわかる。さらに投球した腕が下に振り切った反動で、跳ね上がっている。これは下半身の回転力が強く、腕が強く振られていることを端的に物語る。

図4 西武ライオンズ時代の松坂の投球完了時によく見られた姿勢。右のお尻は打者側に向くほど回転し、腕は投げ終わった後、跳ね上がっていた(イラスト:大下恭佳)

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