本編のなかで、三人がターゲットに絞ったのは、表向きはこどもの福祉に取り組む公益財団の会長であり、裏の顔は暴力団のフィクサーである、赤星栄介(江口洋介)。地上げなどにかかわった闇の利益をため込んだ、資金は数百億円にのぼる。税金逃れを狙って、赤星は海外にその資金を移そうとしている。
赤星は国税局査察部に、脱税違反を狙われている予感がしている。愛人のマンションに近づくと、査察部と思われる人間たちが愛人宅の入り口でもめている。ビデオカメラで動向が撮影されている。資金の海外移転を急がなければならない。
ダー子は、キャビンアテンダント試験の猛勉強をして、格安航空会社に採用される。ボクちゃんは、その会社のオーナーの息子で、海外のカジノで大損を続けて父親の闇資金で一発逆転を狙っている、という役どころである。
赤星は、ふたりを利用して資金の移動を考える。部下にボクちゃんが本当に航空会社のオーナーの息子かどうか確認させると、ボクちゃんは犬の散歩のアルバイターとしてオーナーの家に入り込んでいてばれない。
ボクちゃんが赤星を狙った詐欺に加わったのは、リチャードが赤星に近づいて信用を得ようとしたところ、全身打撲で昏睡状態に陥った仕返しをするためだった。
ダー子は、赤星に海外に資金を移動させるために、出入国の手続きが手薄な「いわき空港」からのチャーター便を提案する。部下たちと手分けして、機内に持ち込んだ20億円をどのようにして、奪い取るのか。
突然、機長のアナウンスがある。バード・アタックつまり鳥がエンジンを止めたために、不時着をしなければならないと。さらに、それに備えて機内の重量のある荷物を機外に捨てることを告げる。
ダー子は20億円が入ったアタッシュケースを次々に外に投げ捨てる。その時、リチャードが登場して作業を手伝う。ボクちゃんは驚く。ダー子は、3人分のパラシュートを取り出して、脱出を図るという。赤星はそのひとつを奪い取って背中に背負い、ひとりだけで機外に姿を消す。
機内に拍手がおこる。資金が入ったアタッシュケースは残してあり、捨てたのは偽物だったのである。赤星の部下たち以外の乗客たちは、ダー子が「子猫ちゃん」を呼ぶ、雇った仲間たちだった。奪ったカネの分け前を仲間たちばかりではなく、赤星の部下たちにも配って、人生をやり直すように諭すのだった。
今回の2人の分け前は……
コン・ゲームは、ゲームの進展は観る者にすべて明らかにされる。最後のどんでん返しで、それまでの小さな仕掛けの数々が、点から線となって爽快感をもたらす。
赤星が資金の海外移転に追い込まれた、愛人宅の査察部も、ビデオカメラの追跡も、ダー子とリチャードが演じたことだった。リチャードが大けがを負ったのも嘘で、ボクちゃんを赤星に接触させて信用させるためだった。
チャーター便が飛び立った「いわき空港」も大掛かりな仕掛けで、ゲームが終わると空港を示す看板の撤収作業が始まる。
コン・ゲームは、映画では詐欺師たちが大金をつかんで幕を閉じることもできるが、公共の電波にのるドラマは、そうもいかないようだ。ラストシーンで、リチャードが今回の仕事の分け前を2人に封筒に入れて渡すと、中身は小銭だけだった。航空機のチャーター料や、雇った「子猫ちゃん」たちの費用がかさんだ。
古沢脚本のそんなジョークも悪くない。
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