地獄に仏のタイ寺
ブッダガヤに定刻より1時間半遅れて列車は到着。夕刻7時を過ぎており駅前でも暗い。駅からブッダガヤの中心地までリキショーで小一時間であるが、ガイドブックによると夜間のリキショーは車夫が雲助に早変わりするので危険とある。
車中で知り合ったスイス人バックパッカーがゲストハウスの迎えの車を予約しているというので、割り勘で相乗りすることにした。1人当たり300ルピー(≒540円)と割高だが安全第一である。
スイス人の予約したゲストハウスは値段が高く中心地から離れていたので、安宿を見つけるべくさらに30分歩いて中心地に向かった。チベット、モンゴル、ネパールなど仏教国のお寺が巡礼者の便宜のために宿坊を運営している。ところがハイシーズンで自国の巡礼者を優先していることから泊まれる宿坊が見つからない。
4番目に訪ねたタイ寺はかなり立派なお寺で宿坊も施設が整っているようだ。夜9時を過ぎており多少焦ってきた。通りがかった修行僧に聞くと宿坊のレセプションを教えてくれた。レセプションは観光バスで到着したばかりのタイ人団体様でごった返していた。
一段落してタイ人の受付に声を掛けるとニコニコと日本語で歓迎。バンコクからボランティアで来ているという大学生だ。日本に興味を持っており、独学で日本語を勉強しているという好青年だ。
宿坊は現在団体客で満室だがスタッフが寝泊まりしているゲストハウスはお寺が借り切っており現在1室空いているので、1泊だけなら無料で提供しますとのこと。さらに宿坊の食堂は朝食・昼食をビュッフェ方式で提供しているので自由に利用してくださいとの有難いオファー。
長引く下痢とタフなインド人社会に揉まれて心身ともに衰弱していたオジサンにとり好青年の出現は正に地獄に仏であった。
まだまだ続くタイ寺の御加護
翌日部屋をチェックアウトしてからお礼言上にレセプションに行った。昨夜の好青年が待っていましたとばかりにオジサンの予定を聞いてくる。1週間ほどブッダガヤに滞在する予定であると答えると用意した部屋に案内するとのこと。
彼は私のバッグパックを持って歩き出した。タイ寺の近くのバングラデッシュ寺の門をくぐり新築の2階建てのホテルのような建物の一室のドアを開けてバッグパックを置いた。部屋はバストイレ付きで普通の中級ホテルのような内装である。
この建物はバングラデッシュからの巡礼者のための宿坊のようだ。タイ寺が建設費用の一部を寄付したので、宿坊の一部を無償でタイ寺に提供してくれるとの説明。ブッダガヤ滞在中はこの部屋を使用してくださいとのこと。
さらに「タイ寺の付属診療所のタイ人の医者に話しておいたので、一休みしたら診療所に行ってください」との有難い言葉。荷物を整理してから診療所に行くと、温厚そうな内科医の先生が待っていた。細菌性の下痢との診断。抗生物質、お腹のガスを抑える薬、痛み止めなど5種類の薬を処方。
薬剤師が薬を準備している間に聞くと、内科医の先生はバンコクの病院に勤務している。ボランティアとして派遣され半年間ブッダガヤで診療しているという。薬剤師も同様とのこと。
薬剤師はいい感じの妙齢の女性で、丁寧に薬の飲み方や注意事項を説明してくれる。彼女が出す薬なら速攻で下痢が収まると確信した。こうしてタイ寺の観音様の御加護により快癒した次第。
→第5回に続く
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