オトナの教養 週末の一冊

2018年4月27日

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東嶋和子 (とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

『死体は嘘をつかない 全米トップ検死医が語る死と真実』(ヴィンセント・ディ・マイオ,ロン・フランセル 著、満園真木 翻訳、東京創元社)

 米国で2016年に刊行されるやいなや評判を呼び、翌年のアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞ベスト・ファクト・クライム部門の候補に選ばれただけのことはある。とにかくスリリングで、ページをめくる手が止まらない。

 素材、表現、組み立ての妙。そして、ノンフィクションならではの現実の重み。ドクター・ディ・マイオの人生観を浮かび上がらせつつも、饒舌になりすぎないフランセルの筆致。

 本書に取り上げられている事件は、どのエピソードをとっても、謎解きの面白さにとどまらず、社会の問題や人生を考えさせる短編小説になっている。

オズワルドの死体は替え玉?

 まずは、2012年にフロリダ州で起きた黒人少年射殺事件。自警団を組織していた白人男性が少年を撃ったことから、正当防衛か、それとも人種差別によるヘイト殺人か、当時のオバマ大統領もまきこんで全米に波紋が広がった。事件の鍵を握っていたのは、少年の胸に残されていた銃創だった。

 <あらゆる集団リンチは思いこみから結論に飛びつくことで始まる。そのような多くの例を目撃してきた我々は、思いこみから結論に飛びつくことが致命的な過ちを生むと、そろそろ学んでしかるべきだ。>

 <多くの人がジョージ・ジマーマンの射殺を白と黒の事件にしたが、まったく白と黒の事件などではなかった。>

 <真の問題は司法の不公正ではなく、一連の不幸な過ちが、致命的な双方のオーバーリアクションにつながったことだった。>

 さらには、「シリアルキラー」という言葉や「代理ミュンヒハウゼン症候群」という診断名がまだなかった1960年代の乳幼児殺し事件。

 2003年、ロサンゼルス郊外にある大物音楽プロデューサーの豪邸で、女優が口を撃たれて死亡した事件。

 1993年、田舎町の森で8歳の男児3人が虐待され、殺された事件。悪魔崇拝に傾倒していたとされる地元のティーンエイジャー3人が有罪となり、主犯格の少年には死刑が宣告された。しかし、のちに冤罪が叫ばれて、ディ・マイオが真相究明に乗り出す。

 1963年にテキサス州ダラスでケネディ大統領を暗殺し、その2日後に殺されたオズワルドのエピソードも興味深い。埋葬された死体は替え玉だったと主張する英国人作家が現れ、死後18年たって墓が掘り起こされることに。ディ・マイオを含む法医学者チームが死体の身元確認にあたるが・・・・・・。

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