Washington Files

2018年5月8日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

「司法妨害」容疑にしぼられる

 これとは別に進行中のFBIによるセックス・スキャンダル捜査からも大統領は目が離せない。

 この件についてはすでに報じられた通り、トランプ氏の最も信頼の厚いマイケル・コーエン顧問弁護士が、トランプ氏と以前に性的関係を持ったとされる元ポルノ女優に口止め料として13万ドルを支払った事実を認めてきたが、FBIがこれに関連してコーエン氏の自宅などの強制捜査で膨大な関連書類、証拠品を押収したことで、ロシアゲート関連を捜査中のモラー特別検察官チームがこれまで把握していなかったトランプ氏周辺の新たな情報や貴重な資料も見つかるのではないかとして、米マスコミも大きな関心を見せている。

 もともとFBIによるコーエン氏強制捜査は、モラー特別検察官側からの照会で行われたものだっただけに、強制捜査で得られた、口止め料支払い疑惑以外のロシア関連の重要情報があった場合は、モラー氏側に渡されたとしても不思議ではない。

 注目のモラー特別検察官側の動きだが、かねてから大統領からの直接事情聴取をホワイトハウスに要請しているほか、最近になって、もし大統領がこれに応じない場合は、「最後の手段」として大陪審への召喚の意向も示唆し始めた。そして捜査の焦点は大統領に対しこれまでかけられてきたいくつかの嫌疑のうち、「司法妨害」容疑にしぼられてきているとされる。

 この「司法妨害」はニクソン大統領を辞任に追いやったウォーターゲート事件捜査の場合と同じだ。

 ニクソン氏の場合は、ホワイトハウス内で大統領補佐官と共謀してFBIによる事件捜査をやめさせようとしたことが最大の問題となり、米議会での弾劾予備審議で「司法妨害」と判断される結果となった。

 今回のロシアゲートの場合、大統領にまつわるさまざまな疑惑のうち、FBIが最も重視しているのが、大統領がジェームズ・コーミーFBI長官(当時)とホワイトハウスで2人だけの夕食を取った際、フリン大統領補佐官に対する捜査をやめるよう迫った事実だ。大統領はその後、これを否定したが、コーミー氏は議会証言で宣誓の上、夕食の際の会話内容をメモにして残しているとしてこの事実を再確認した。

 加えて、大統領がもし、モラー特別検察官の事情聴取を拒否するだけでなく、同氏の解任という強硬措置に打って出た場合、いよいよ重大な「司法妨害」容疑の対象となり、ニクソン大統領が当時の司法長官にアーチボルド・コックス特別検察官の解任を命じたウォーターゲート事件と酷似した展開となる危険もはらんでいる。

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