危機はどこまでエスカレートするか
問題は、この危機がどこまでエスカレートするかである。イランとイスラエルがシリアで直接衝突する事態となれば、終わりが見えかけていたシリア内戦は再び激化しかねず、ロシアにとって明らかに望ましい状況ではない。かといってロシアがイランとの関係を簡単に捨てることができないことはすでに述べた通りである。
これについては、ロシアが両国の仲介役となって緊張緩和を図れないのかという声もある。たとえばイランに対して、シリアに展開した革命防衛隊をイスラエル国境に近づけないこと、反体制派武装勢力との戦闘に必要な以上の重火器を持ち込ませないことといった緊張緩和措置をロシアの音頭で実現できないかという見方である。
これは建設的な意見ではある。イランの核開発を規制するJCPOA(包括的共同作業計画)から米国が離脱を表明したことで、イランが再びロシアに対する依存度を高めることもたしかであろう。その一方、ロシアがイラン(特に革命防衛隊)の行動にどこまで影響力を及ぼせるかは不透明である。
ロシアの調停が奏功しなかった場合、事態のエスカレーションを緩和することはできるのか。今のところ、ロシアもその他のステークホルダーも、有効な「プラン-B(次善策)」を見いだせていないようである。
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