約20万人にフォローされている林氏のもとにも、震災直後から大量の救助要請が寄せられたという。しかし、林氏の場合、それを闇雲にRTするのではなく、緊急性と信憑性のあるものを選び、できる限り正確な情報を掴んだうえで、救助要請や安否情報を伝えるという手段を取った。気仙沼から救助を求めてきたある発信者に質問を重ねていくと、はじめは救助を必要としているのが一家族だと思っていたのが、実際には四家族いることがわかった。救助に向かう側にとっては重要な情報だ。林氏の例に限らず、発信者はツイッターの140文字という制限に縛られているため、そこに収まりきらない情報があると思ったほうがよい。
著名人のツイッターで拡散された救助要請を見て、実際に役所などへ連絡を取っていた人の掲示板を見ると、マンション名が含まれた救助要請に対し、そのマンションが実在しないことを確認するなど、できる限り情報の確度を上げようと努めていたことが窺える。
震災後、たしかにツイッター上では様々なデマが拡散された。今でもデマか本当かわからない情報が漂流し続けている。ツイッターは誰でも発信者になれるのが利点だが、今回のように社会不安が広がる背景と組み合わさると、根拠の乏しい情報にも惑わされる心理が働きやすくなる。それでは、私たちがデマに惑わされないためにはどうすればよいか。
「Googleリアルタイム」で情報の発信源を探る
まず、デマは大きく2つに分けられる。発信者が特定できるものと、特定できないものだ。前者で顕著だったのは、都内のIT企業に勤める社員が、震災直後に「サーバールームに閉じ込められた。流血している」とふざけてツイートした例である。これは、多くの人から心配するコメントが寄せられたことで本人が事の重大さに気づき、デマを自白したことで事態は収束に向かった。このように発信者が特定できる場合は、わりと短時間で解決する傾向がある。
だが、本当に対処が難しいのは、発信者が特定しにくい場合だ。
放射性物質の拡散による被曝リスクが心配された13日、「うがい薬を飲めば甲状腺障害の予防になる」というツイートが駆け巡り、チェーンメールとなってさらに拡散した。情報の発信者はチェルノブイリを取材したと触れ込む人物だったと記憶しているが、情報が拡散していくうちに誰が発信者であったかわからないものになっている。この情報を受けて14日、独立行政法人放射線医学総合研究所は、「うがい薬には有害物質も含まれているため人体に危険であること、抑制効果は得られないこと」を公式に発表しなければならない事態へと発展した。
千葉県市原市のコスモ石油千葉製油所で起きた火災事故におけるデマも、こちらに属するだろう。11日19時ごろから、「コスモ石油の関係者より」という枕詞がつけられて、「爆発により有害物質が雲などに付着し、雨などといっしょに降るので外出の際は傘かカッパなどを持ち歩き、身体が雨に接触しないようにして下さい!」というツイートが大量に出回った。これもチェーンメールとなり大量に拡散された。チェーンメールを受け取った人によると、「厚生労働省より」に置き換わっていたりするなど、悪意が挟み込まれた可能性もある。翌日には、コスモ石油が正式に否定のコメントを出したことで事態は収束に向かったが、10日以上経った今でも、ツイッター上にはこのデマを信じている人が散見される。