WEDGE REPORT

2018年6月7日

»著者プロフィール
閉じる

樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

多くの物証が無視される?

 ほかにも狙撃者がいたというのが、もっとも有力な説だ。後頭部と背中を撃たれた傷が致命傷というが、サーハンがケネディ氏の前方に立っていたのを、多くの人たちが目撃している。

 FBI(連邦捜査局)やロス市警は、暗殺現場近くのホテルの食器室のドアなどから、サーハンの拳銃に装填されていた8発を上回る数の弾丸が発射されたことを示す弾痕を発見しながら、その証拠を無視したという説、狙撃するには好都合の位置にいた武装ガードマンについて、所持していた銃の検査など必要な捜査をしなかったという説もある。サーハンが事件前、ナゾの黒髪女性と一緒にいたという証言も単独犯行を否定する根拠になっている。

 ハリウッドの〝セックス・シンボル〟、マリリン・モンローが自殺した際に検視した著名な検視医、トーマス・ノグチ氏も登場、91歳の同氏が、最近行われた事件に関する研究会で、ケネディ氏の衣服に付着していた火薬がなどから、サーハン受刑者の銃による傷という見方に疑問を表明したという。

 シュレード氏はポスト紙に対して「サーハンはロバートと他の人を傷つけたのは事実だが、致命傷を与えたのは彼の拳銃ではなかった。検察は〝第2のガンマン〟がいたことを知りながら、サーハンだけを有罪に追い込んだ」と述べ、強く再捜査をもとめている。

 もっとも、再捜査の是非について、ケネディ家では意見が分かれているという。ロバート・ジュニア氏、キャスリーン女史が強く求めているのに対して、長男、ジョゼフ・ケネディ元下院議員ら3人は反対。故上院議員の未亡人で90歳のエセル夫人は、沈黙を守っているといい、ケネディ家の苦悩が伝わってくるようで痛ましい。

同時期のキング牧師暗殺にも謎

 暗殺事件、とくに超有名人のそれには、さまざまな謎、憶測や疑念がつきものだ。ことの性質を考えればあり得ることとはいえ、他の事件を含め、どうしてこうまで、ナゾめいた事件ばかりなのだろう。

 兄のジョン・F・ケネディ大統領の暗殺について、いまなお、さまざまな議論があるのは周知のことだし、ロバート氏暗殺事件の2カ月前に起きた公民権運動指導者、マーチン・ルーサー・キング牧師の殺害事件でも同様の疑念が取りざたされた。しかも、キング牧師の暗殺事件では、やはり遺族が犯人とされていた男の無実の主張を強く支持。ロバート・ケネディ暗殺事件と類似点がある。

 キング牧師は、68年4月4日にテネシー州メンフィスでやはり銃で撃たれた。

 ジェームズ・レイという男が逮捕、起訴され、禁固99年の刑が宣告されたが、レイ服役囚は一貫して「犯人は他にいる」と容疑者の具体名まであげて訴えていた。キング牧師の未亡人や長男は、強くこの主張を支持し、連邦政府に再捜査を働きかけるなどしていた。

 レイ服役囚は、事件後ちょうど30年経った1998年4月、テネシー州の刑務所で、再審の望みかなわず死亡した。

関連記事

新着記事

»もっと見る