6月8日から9日にかけてカナダ・ケベック州のシャルルボワで開催された主要国首脳会議(G7サミット)は、トランプ米大統領が議長国カナダのトルドー首相による米国の通商政策批判に激怒して首脳宣言への承認を撤回したことにより、大きな注目を浴びた。近年、G7サミットへの関心が低下したり、不要論が増える中、思わぬ形で関心を集めたのは皮肉なことである。
G7サミットの存在意義は、今回の首脳宣言の前文でも端的に触れられている通り、「自由、民主主義、法の支配、人権の尊重、ルールに基づく国際秩序促進へのコミットメント」という価値を共有する「先進的経済国、主要な民主主義国」の首脳が集まる点にある。自由、民主主義、法の支配、人権の尊重、ルールに基づく国際秩序の諸価値は、技術の進歩など社会の新たな趨勢に従って、具体的に肉付けされていく必要がある。この点、今回のG7サミットでは、デジタル社会、人工知能(AI)、ジェンダーの平等といった観点が特に重視された。首脳宣言その他の成果文書の中から、敢えて、これらに絞って紹介してみたい。
『人工知能の未来のためのシャルルボワ・共通ビジョン』では、人工知能(AI)は、経済成長の新たな源を導入し,我々の社会に重要な利益をもたらし、最も喫緊の課題への対処に資する潜在性を有する、と位置づけたうえで、以下のような点を指摘している。
・適切な法体系の整備等を通じたプライバシーの保護
・サイバー・セキュリティへの投資
・データ品質及びデータセキュリティに関する研究開発の促進
・プライバシー、個人データの保護のための適用可能な枠組みを尊重、促進
・強制的な技術移転、不当なデータのローカライゼーションに関する要求及びソース・コードの開示といった差別的な貿易慣行への対応
・知的財産権の効果的な保護と執行の必要性