2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年6月27日

 『外国の脅威からの民主主義擁護に関するシャルルボワ・コミットメント』は、ロシアによる選挙干渉などで重大な問題となっている、インターネットを用いた民主主義への挑戦への対処を取り上げている。同文書は、「民主主義とルールに基づく国際秩序は、権威主義体制と国際規範の軽視によりますます挑戦を受けつつある。特に、外国の主体が我々の民主的な社会と制度、我々の選挙プロセス、我々の主権及び安全を損ねようとしている。これらの悪意ある多面的かつ絶え間なく変化する戦術は、我々にとっての深刻な戦略的な脅威である」として、以下のような点を謳っている。

・集団的にまた個別的に外国の脅威に対応

・G7 各国の民主的プロセス及び国益を損ねることを意図する外国の主体による悪意のある干渉を予防し、阻止し、対応するために G7 の協力を強化

・情報共有及び分析、協調した対応のための機会の特定等を通じ、民主主義への脅威を特定し対応するための協調を強化するための G7 即応メカニズムを確立

・外国の主体による情報技術の悪意ある不正使用に関して、個人情報の利用、プライバシーの侵害に関する透明性を向上

・全ての種類の政治的な宣伝の資金源、特に選挙キャンペーン期間中のものについて高い水準の透明性を確保

 ジェンダーの平等については、とりわけ力が入れられ、首脳宣言でも「ジェンダー平等は人権の達成の上で根本的なものであり、社会的及び経済的に不可欠なものであると認識する」と謳われている他、『途上国における女児・思春期の少女・女性のための質の高い教育に関するシャルルボワ宣言』や『デジタルの文脈における性的及びジェンダーに基づく暴力、虐待、及びハラスメントの撲滅に対するシャルルボワ・コミットメント』といった文書が策定された。

 成果文書は、おそらく議長国カナダの意向を汲んで、かなりリベラルな内容も含むものとなった。例えば、ジェンダーの平等自体にはもちろん異存はないが、少し強調し過ぎるきらいがあった。しかし、全体としては、現代の社会において、自由、民主主義、人権等の価値を実践していくための、G7としてのカラーを出すことができたと評価してよいであろう。G7不要論は当たらないと思われる。

 なお、トランプへの対応ぶりについては、フランスのマクロン大統領が「G6+1」になること、つまり米国の「排除」も辞さないという強硬姿勢を示すなどした。トランプが西側の価値から逸脱している、もっとはっきり言えば、西側の価値を破壊するような言動をとっている以上、当然である。トランプの敵対的な通商政策や、G7へのロシア復帰論などは、異様であると言わざるを得ない。G7の本来の目的とは異なるが、西側の主要国が結束してトランプに否と言える多国間会議の存在という点でも意味があると言えるかもしれない。

  
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