2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年7月13日

 今回の河野外相のインドネシア訪問では、「離島における水産セクター開発計画」が特に注目に値する。これは、南シナ海南端のナトゥナ諸島など6島での漁港整備などに25億円を無償供与する合意である。ナトゥナ諸島は、そのEEZの一部が、中国が主張する「九段線」に含まれている。2013年には同諸島近海でインドネシアが中国漁船を拿捕したのに対抗して、中国は武装艦を派遣して漁船を奪還した。南シナ海問題で中立的立場をとってきたインドネシアが対中警戒に方向転換する大きなきっかけとなった。インドネシアは、同諸島への海軍力・空軍力の展開、水産業の育成強化を行うようになった。ナトゥナ諸島というのは、そうした象徴的な意味合いがある場所である。

 インドネシアの最近の興味深い動きに、インドとの関係強化がある。今年5月のモディ首相とジョコ大統領との首脳会談では、相互に「戦略的パートナー」と呼び合い、インド洋における航行の安全を守ることを強調、また、インドネシアのサバン島とインドのアンダマン諸島におけるインフラの共同整備でも合意するなどしている。これは、インドのアクト・イースト政策を受けたものである。インド洋に面した大国同士の協力は、日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」にも、当然プラスとなる。

 日本は、インドネシアともインドとも良好な関係にある。日本は、こうしたインド太平洋の沿岸国と協力して、法の支配に基づいた、繁栄したインド太平洋地域を目指すネットワーク作りを推進し得る立場にある。中国がルールを無視した行動をとればとるほど、そうした動きは今後とも強まっていくことになろう。

  
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