最近、台湾で取られたアンケート(「天下雑誌」という国民党系の雑誌)によれば、これまで二十数年間にわたって取られてきた上述の傾向が変わりつつあり、「私は台湾人である」という考えの若者の数がやや減少気味であり、中国に対する嫌悪感も薄れつつあると報道されている。アンケートの結果をどう解釈するかは、いろいろの政治的考慮もあり、必ずしも一定しない。
ただし、青年たちにとって、台湾での給料より、中国の特定の地域での給料が 2~3 倍高いということになれば、中国に機会を求めようとする者たちがでてきても、不思議ではない。
その意味では、蔡英文政権にとって、中国の浸透工作の結果、一つの台湾アイデンティティーの危機を迎えつつあるといっても間違いではないだろう。 5月15日付の台北タイムズ紙の社説‘China targeting young Taiwanese’は、中台間での小中学校の教師と生徒の相互訪問が、「中国の偉大さ」を台湾の子供たちに浸透させる手段として使われているとして、台湾の教育機関を守るべく政府が対抗措置をとるよう求めている。同社説が指摘する通り、こうした中国側による統一戦線工作をいかに防ぐかについて、台湾側として明確な基準を早急に作るべき時にきている。「天然独」は放っておいても増えていく、というようなものではないことだけは、はっきりしている。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。