2023年1月29日(日)

前向きに読み解く経済の裏側

2018年7月17日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

長期投資は価値の分け前にあずかるもの

 株式会社は、株主と銀行から資金を調達し、労働者を雇ってモノ(財またはサービス)を作り、付加価値を生み出しています。生み出された付加価値を労働者に賃金として、銀行に金利として、株主に配当(および内部留保増による値上がり益)として、分配しているわけです。会社が付加価値を生み出すのは自然なことで、その分け前にあずかることも自然なことです。

 もちろん、会社が儲かるか損するかはわかりませんが、「10年後にも当社は生き残っていて、ちゃんと利益を稼いでいるだろうか」を予想することは、「人々の予想が明日までに変化するだろうか」を予想するよりは遥かに賭けの要素の少ない作業です。当社の決算書や技術力や経営者の言動等々を冷静に分析すればよいのですから。

 長期投資のつもりで株を買ったら、日々の株価は見る必要がありません。その会社が10年後も生き残っていそうか否か、きちんと利益を稼いでいるか、をチェックしていれば良いのです。

 もっとも、株を買った日がたまたまバブルのピークだったりしたら、いくら10年後の会社がしっかり儲けていたとしても、損をしてしまうかもしれません。その意味では、株を買うときは一度に大量に購入するのではなく、少しずつ時間をかけて購入する、といった工夫も必要ですね。そのあたりのことは、別の機会に。

ケインズの美人投票を解説する(初心者むけ)

 ケインズの美人投票という言葉は、よく聞きますが、それが何だか理解している人は多くないかも知れません。端折って言えば、「当時の美人投票は、優勝した候補がトロフィーをもらい、その子に投票した審査員も商品をもらった」のです。

 それにより、審査員の態度が大きく変わります。自分が美人だと思う候補ではなく、優勝しそうな候補に投票するようになるわけです。たとえば読者が審査員だとして、候補Aが美人だと思っていても、候補Bが登場した時に審査員席から拍手が起きたなら、候補Bが勝ちそうだと思ってBに投票するかもしれません。読者以外にも、読者と同じ事をする審査員も多いでしょう。そのことを知っている筆者は、Bに投票しますから、ますますBの得票が増えてBが圧勝するかもしれません。

 たとえば「Cが審査員に賄賂を配ったからCが優勝する」という噂が流れたら、皆がCに投票するので実際にCが優勝するかもしれません。問題なのは、その噂が全くの嘘であっても、人々が噂を信じればCが優勝する、ということなのです。

 株式市場でも、様々な噂が流れます。噂が真実であるか否かは重要ではありません。人々が噂を信じるか否かが重要なのです。つまりケインズは、株の短期投資においては「良い株を買うと儲かるのではなく、人々が買いそうな株を買うと儲かる」と言ったわけですね。

 ただ、これは短期投資の話です。長期投資は人々の噂と関係なく、良い会社の株を買った人が儲かります。「人の噂も75日」ですから、投資期間が75日以上の人は他人の噂を気にする必要はないでしょう。

  
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