Washington Files

2018年7月19日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)所属の軍人12人の起訴

 さらに同月13日、ロシア疑惑に関する新たな事実が明らかにされた。司法長官の任命により同事件を独立した立場で徹底捜査させるため設置されたロバート・モラー特別検察官が、同事件に関連してロシア軍参謀本部情報総局(GRU)所属の軍人12人の起訴を発表したのだ。

 同起訴内容は事件を審理している連邦大陪審で認められたが、それによると、渦中の12人は米大統領選が本格化してきた去る2016年3月ごろから投票日の11月8日の間に、ヒラリー・クリントン候補の選挙戦を統括する民主党全国委員会(DNC)本部や同候補陣営幹部らのコンピューターに不正侵入し、大量のメールや私文書を盗んだ後、ロシア情報機関に買収されたインターネット会社を通じてつぎつぎに流布した。また、同グループは、ある州の選挙管理委員会のウェブサイトからも有権者約50万人分の個人データを盗んだ。

 今回の起訴がとくに重要なのは、KGB出身のプーチン大統領の息のかかったGRU工作員たちが特定され、具体的に直接事件に関与していた事実が明らかにされたことだ。

 トランプ大統領はかねてから「ロシアの情報機関が米大統領選に介入したという米マスコミの一連の報道はまったくのフェイク・ニュースだ」と一蹴してきたが、今回、米連邦大陪審までが特別検察官の訴追内容を認めたことで、自らのツイッターなどを通じた一連の主張が否定されたことになる。

トランプの呼びかけと一致する工作員によるハッキング時期

 また、特に米マスコミが注目したのは、起訴状の中で、GRU工作員たちが具体的な行動を起こした時期と、トランプ大統領候補(当時)が記者会見の場で、ロシアに対し、クリントン陣営からのメール・ハッキングを呼びかけた時期が一致していたとの指摘があった点だ。

 すなわち、2016年7月27日、トランプ候補はクリントン氏個人が国務長官時代に公私を混同するメールのやりとりをしていたことを問題視し、これを選挙戦での攻撃材料とするために、「ロシアよ、クリントンが大統領になってほしくないなら、彼女の過去のメール内容を入手したらどうか」と呼び掛けていた。そして同じ日に、起訴されたGRU工作員12人が、DNC本部やクリントン女史個人のメール奪取に乗り出していた。

 アメリカの主要メディアの間では、大統領の呼びかけとロシア側の対米工作開始日が同じだったことについて、たんなる偶然の出来事だったとの見方は少ない。

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