根っこにギュレン師送還問題
トランプ氏は7月のツイートで、ブランソン牧師を長期間拘束していることに大規模な制裁を課すと宣言。米政府はこの発言に従って8月1日、トルコの法相と内相の2人を在米資産凍結などの制裁対象に指定すると発表、10日にはトランプ氏がトルコにすでに課している鉄鋼とアルミニウムの関税をそれぞれ50%、20%に倍増させるとたたみかけた。
これに対して、エルドアン大統領は2閣僚の資産凍結に同等の報復措置を課すとし、鉄鋼への追加関税についても「経済戦争には負けない」「われわれに脅しは通用しない」などと強く反発。国民に対し通貨リラを支えるため「金やドルをリラに交換するよう」呼び掛け、米国との全面対決の姿勢を打ち出した。
しかし、こうした両国の緊張激化を受け、リラは10日だけで約20%下落。その価値は年初以来40%以上も下落するという非常事態に陥った。強権的なエルドアン氏が中央銀行の政策運営に介入する恐れも出たことからリラ安に拍車がかかり、米国や日本を含め世界市場が動揺、株安となった。
トルコと米国間には、ブランソン牧師問題に加え元々、いくつかの懸案がある。特にエルドアン氏にとって我慢がならないのは、クーデター未遂事件の黒幕と名指ししているギュレン師の送還問題だ。エルドアン氏は事件後、軍や政府、司法、学校などからのギュレン派一掃に乗り出し、これまでに15万人を拘束し、11万人以上を職場などから追放した。
しかし、当のギュレン師は米ペンシルベニアの山中に在住し、トランプ政権もエルドアン氏の送還要求に応じていない。同氏は6月の大統領選挙で初の「実権型大統領」として再選を果たし、閣僚の任免権や国会承認なしの非常事態宣言発布など強力な権限を手に入れ、その独裁的な姿勢が際立っている。