世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年9月5日

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人民解放軍の能力向上

 強く繁栄した中国建設のため、「中国の夢」は、大国に見合う軍事力を展開することを内包する。中国の軍事戦略ペーパーは、PLAに中国の海外権益を守ることを要求する。そこでは、特に、海洋及び情報分野、攻撃的航空作戦、長距離作戦及び宇宙とサイバーの重要性が強調されている。PLAは、複雑な統合作戦能力を有する軍隊になるよう、その歴史上、最も包括的な構造改革を行っている。PLAは、「情報化された局地戦」を闘い勝利する能力を持とうとしている。中国共産党は、軍部における汚職撲滅も継続している。中国の指導者達は、軍の近代化及び組織改革に熱心である。中国の軍の近代化の狙いは、米国の中核的作戦及び技術の優位を削ぐことにある。軍の近代化を進めるため、中国は、外国の軍事的及び汎用性のある技術を取得するために、様々な方法を使う。例えば、狙いを定めた外国直接投資、サイバーによる盗取、民間人による技術の取得等である。最近問題になったケースでは、中国の情報機関の利用、コンピューターへの侵入、その他非合法的方法で、国家安全保障に関わり輸出規制のかかった技術や機械等を取得しようとする。更に、中国の海外権益が増大するに伴い、中国軍の近代化は、中国の勢力圏を超えて投資やインフラ整備が行われるようになった。それには、例えば、シーレーンや海賊対処、平和維持活動、人道援助・災害救助(HADR)等が含まれる。2017年8月、中国は、正式に、最初の海外軍事基地をジブチに開設した。中国は、更に、海外に軍事施設を展開するだろう。

台湾に対する政治及び安全保障上の継続的準備

 中国の戦略は、台湾の独立志向の政治的態度を妨害するために、アメとムチを組み合わせて行くことである。2017年、台湾は外交関係を有する国数を減らし、国際機関は、台湾の参加を認めないままである。中国は、台湾を平和的に再統一することを主張するが、武力の行使を否認したことはなく、引き続き軍事的作戦にも必要な軍事力を展開している。2017年の台湾国防報告は、台湾周辺におけるPLAの軍事活動の増大は、「台湾海峡の安全保障にとって大きな脅威」になっていると懸念を表明した。

米中二国間防衛関係

 米国は、強い立場から競争力を維持しながらも、競争相手と協力する分野も探っている。米国は、建設的かつ結果指向型の関係を中国に求める。米国は、予算年度2000年の国防権限法の範囲内で、中国との関係を保っている。国防省は、中国の戦略や兵力の展開を引き続き監視し、中国には、軍の近代化について透明性を高めるよう要求している。米国は、本土防衛、抑止、同盟国・友好国の防衛及び地域の平和のために、兵力や作戦計画等を適応させていく。

参考:Office of the Secretary of Defense ‘Annual Report to Congress : Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2018’ May 16, 2018)

 上記の報告書では、中国は、海兵隊の規模を、現在の1万人態勢から、2年後の2020年には3万人態勢まで3倍に拡大する計画があることが明らかにされた。2020年と言えば、東京オリンピック・パラリンピックの年であるが、台湾や尖閣諸島周辺に関しては、日本も十分に警戒しなければならないだろう。1964年の東京オリンピックの開催中に、中国は、初めての原爆実験を行なったという歴史もある。今年6月に、米国の軍備管理協会が発表した資料によると、北朝鮮の核兵器の数は15、中国は280と言われる。広島原爆祈念式典にも、国連安保理常任理事国のうち、中国のみが、この3年間以上、式典を欠席している。

 報告書では、中国が潜水艦数も、56隻から約70~80まで2年間で増やす計画があるとされた。中国の経済成長が鈍化すると言われても、軍拡は鈍化どころか速まっている。

 本年、米国議会が、台湾旅行法を成立させたり、国防権限法(予算年度2019年)が超党派の賛成で成立したりしたのも、この報告書を読めば、よく理解できる。

 さて、日本は、どうするか。
 

  
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