今回の断交は、8月12日から20日にかけて南米のパラグアイと中米のベリーズ歴訪と経由地に当たる米国立ち寄りの直後に行われた。中国からの強い圧力があったことは容易に想像できる。
上記発表では、台湾が民主的国家として責任ある行動をとっていることをアピールするとともに、中台間で行われてきた外交関係をめぐる競争の内幕を赤裸々に暴露しており、興味深い。台湾としては、今後は形式的な外交関係よりも、自由、民主主義、人権、法の支配といった価値を同じくする国々との実質的な関係を重視していく方針に転換していくことになろう。これに対し、中国側としては、台湾を窒息させるために、政治、軍事、外交、経済、台湾人の人心掌握など、あらゆる分野での圧力を強化するのは確実である。
蔡英文総統は、最近、価値を共有する国々どうし団結し中国に対抗することを、国際社会に対し、しばしば訴えている。今回の断交に際する談話においても、「中国の世界中における行動は、他国への内政干渉であれ、国際市場を掘り崩す行為であれ、既に世界の安定を深刻に損ねている。これは台湾だけの問題ではない。事態は急を要し、宥和の余地はない」と述べている。傾聴すべき警告である。
なお、ホワイトハウスは今回の断交について、西半球への中国の介入を受け入れる決定であるとエルサルバドル政府を非難し、「短期的な成長とインフラの発展を引き込むために、中国との関係を構築したり拡大しようとする国々は失望するだろう。世界中の国々は、中国の経済的誘引は中国への経済依存と中国の優位を高めるものだと気づいている」、「米国は中国による両岸関係の不安定化と西半球への政治的介入に反対し続ける」などとする声明を8月23日付で発表している。これに対し、台湾の総統府は翌日、ホワイトハウスの声明に対し感謝を表明している。最近の米国による台湾重視の姿勢が改めて示されたと言えよう。
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