大統領解任は可能なのか
とはいえ、修正憲法25条に基づいた大統領の解任は果たして可能なのか。この条文は1963年にケネディ大統領が暗殺されてから議会で審議が続けられ、1967年2月に正式に憲法となった。
25条の第1項は死亡や辞任、弾劾などによって大統領が不在になった場合について定め、副大統領が速やかに就任することが規定されている。第2項は副大統領が不在になった場合について、また第3項は大統領が一時的に職務遂行不能になった場合の副大統領への権限委譲について定めている。
第3項の実際のケースとしては、レーガン大統領が大腸がんの手術でブッシュ副大統領に権限を委譲したケースなどがある。しかし、今回問題となっている第4項の「大統領解任」の実例はまだないし、実際に政権内部などで俎上に上ったことも初めてだろう。
第4項は大統領が職務遂行不能と見られた場合、副大統領と閣僚過半数の賛成で手続きが開始され、書面で上下両院にその旨送られる。両院がそれぞれ3分の2の多数で賛成すれば、大統領解任が実現する。しかし、書面が議会に送られた後、当該の大統領が職務遂行能力ありとして書面で議会に通知すれば、大統領にとどまることができることなども定められている。
この項目による大統領の解任は大統領の弾劾よりも困難だ。弾劾は下院で過半数の賛成で手続きを開始、上院の3分の2の賛成で成立する。報道が正しければ、ローゼンスタイン副長官はほとんど不可能であることを行おうとしたわけで、正常な精神状態ではなかったとの指摘も出ている。
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