トランプ米大統領が発動を決めた「対中追加関税第3弾」の対象は年2000億ドル(22兆円)という巨額なものになった。第1、2弾と合計すると、中国からの全輸入額の半分に相当する。今回の標的は家電や家具、食料品など消費材が多く、年末のクリスマス商戦に影響が出るとの懸念が強い。激化する米中貿易戦争の背景を探った。
中間選挙の勝利が最優先
トランプ大統領の「中国叩き」の直接的な目的はなにがなんでも11月6日の中間選挙に勝つことだ。中国との貿易不均衡を是正するという選挙公約を実現し、米有権者の支持を獲得するというのが狙いだ。たとえ、中国から実際に譲歩を引き出せなくても、そうした厳しい姿勢を打ち出すことで支持を拡大できるという計算だ。
大統領が中間選挙での勝利を是が非でもほしいのは与党共和党の議会支配を維持しなければならない事情があるからだ。今、大統領には、大統領選挙でロシアと結託したのではないか、そうした疑惑のもみ消しを図ったのではないか、というロシアゲート事件の捜査がヒシヒシと迫っている。もし、中間選挙の結果、野党民主党が下院で過半数を押さえれば、大統領の弾劾というシナリオが一気に現実味を帯びてしまう。
大統領の弾劾は下院の過半数の賛成で訴追が決定され、上院の3分の2以上の同意で有罪となり、大統領は罷免される。現在、下院(435人)では、共和党が民主党より23議席上回って過半数を握っているが、中間選挙では民主党が逆転するというのがほぼ一致した見方。ただ、約60の議席をめぐっては両党の激戦となっており、どう転ぶか分からない。共和党が2議席上回る上院(100人)では、改選議席33のうち、8議席から9議席が接戦だ。
今回の選挙は事実上、トランプ大統領の「信任投票」(米紙)。それだけに大統領は有権者に人気の高い対中貿易赤字の縮小を前面に出してがむしゃらに強硬措置を連発しているわけだ。民主党はトランプ氏の政策のほとんどすべてに反対だが、対中強硬方針については賛同する議員が多い。
トランプ大統領は中国が今回の追加関税に報復措置を取れば、残りのすべての輸入品に追加関税を課すことを検討すると言明しており、貿易戦争が緩和する兆しはない。大統領は18日、「中国は長い間、米国を利用してきた。だが、そうしたことはもう起こさせない」とあくまでも強気の姿勢だ。