タネ切れの中国
中国は米国が第3弾を発動する24日に報復関税を発表する見通しだ。だが、その対象は600億ドル分だという。米国による7月の第1弾340億ドル、また8月の160億ドルにはそれぞれ同額の追加関税を課す報復措置で対抗した。しかし今回は、それができなかった。
中国の米国からの輸入は輸出の4分の1程度しかないため、関税を掛けようにも対象がない状況、つまりタネ切れ状態なのだ。中国の元高官は最近、必要なら米企業のサプライチェーン(供給網)にとって死活的な部品の輸出を停止すると恫喝。米国が中国に代る供給網の代替国を見つけるには数年かかる、と警告した。
その何年かを耐えれば、トランプ政権が交代するだろうとの期待を込めての発言だが、中国にとってこの戦術は危険極まりない。専門家によると、中国からの対米輸出の40~50%は米国や日本などの外国企業が製造している製品や部品だ。彼らはいわば中国にとって味方でもある。しかし、部品の輸出ができないことになると、外国企業は中国を見限り本国や他国に工場などを移転しかねない。実際、日本企業の一部はすでに、中国から撤退を開始している。
日米貿易摩擦の際には、日本側が自動車工場を米国内に移転することによって、米国との妥協を図ったが、中国の場合、輸出に占める外国企業の部品などの割合が大きいので、そうした工場や産業の移転が事実上できない。専門家の1人は「関税で報復するのは限界がある。だからと言ってあまり極端なやり方は取りにくい。習近平政権は必死になって対応策を模索しているが、混乱し、苦悩している」と指摘している。
トランプ大統領が第3弾の追加関税の発動を発表した9月18日は87年前に「満州事変」が起きた日である。中国にとっては「日本の侵略が始まった屈辱の日」(専門家)だ。習政権になってから、中国は日中戦争の始まりを従来の1937年ではなく、満州事変の起こった1931年と主張するようになった。トランプ大統領が満州事変の勃発日と知っていたかは明らかではないが、中国にとっては新たな屈辱の日になるかもしれない。
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