メンバーは「平和ボケしたブス」と開き直り
通常、こういった企画が炎上すると謝罪が行われるものだが、「へきトラハウス」は批判に対して、「討論している平和ボケしたブスは今すぐブラウザバックして『オオカミくんには騙されない』でも観てブスという現実から出来るだけ長い時間目を背けていてください。」というコメントを動画下につけている。※「オオカミくんには騙されない」は、インターネットテレビの人気番組。
本人たちも顰蹙を買うことを前提にこういった動画を制作しているのだろうから、ツッコんだ方が負けなのかもしれないが、負けと言われても不快なものは不快である。上にあげたコメントが倫理的な問題点については触れているが、付け足すのであれば、後ろからいきなり肩を叩く行為について。
たまに、街なかのナンパについていった女性が性被害や窃盗被害に遭うニュースが報じられる。「ナンパについていく方も悪い」と言う人もいるが、強引なナンパは実際にあるし、ナンパを無視して舌打ちをされたり、「ブス!」と怒鳴られたりした経験のある女性もいる。いきなり声をかけてきた相手に「穏便にお引取りいただくスキル」が女性にだけ求められている現実もある中で、本人に直接言ってないとはいえ、声かけを無視した女性に対して「ブス」「お高くとまってる」と毒づくのは、弱い者いじめにしか見えない。
また、この動画はそもそも、次のような掛け合いで始まる。
欠席しているメンバーがデートだという説明
→なぜアイツに彼女がいて俺らにいないんだと思う?
→意識が低いからじゃない?
→違います。女を見る目がないからです。
→(彼女のいるメンバーは)自分とフィットする相手を選ぶのがうまい。
ここで、冒頭のセリフにつながる。
「俺らももうちょっとね、女の子を見る目を鍛えたほうがいいと思う」
「ということでね、振り返りブスババ抜きゲーム!!」
いや、ちょっと待て。
彼女のいるメンバーは「自分とフィットする相手を選ぶのがうまい」という話から、「女の子を見る目を鍛えたほうがいいと思う」につながるのはわかる。しかし、そこでなぜ「じゃあ自分とフィットする相手ってどんな子か?」や、「フィットする相手を見つけに行こう」とならず、「振り返りブスババ抜きゲーム!!」という見た目査定になるのか。
誰もが認める「美人」と付き合うことが自分にとっての「幸せ」だと考えているならば、幸せの基準を他人に投げ売っている。もちろん、企画ありきで適当に前振りを考えただけなのだろうが、その雑さにとりあえずツッコんでおきたい。地上波ではできない「ブスいじり」できちゃう俺たちカッケーなのかもしれないが、旧来の価値観にのっとっているだけの、むしろ保守的な企画である。
「隠れゲイ」「中卒見つけるまで帰れない」企画も
彼らが配信している動画はほかにも、「奇抜な服装してる女全員ブス説」「マスクしてる女全員ブス説」「二重の女、一重の女友達を100%見下してる説」など女性に対してルッキズムを執拗に突きつけている。
また他には「隠れゲイを見つけるまで帰れま10!!!」「中卒のヤツ見つけるまで帰れません!!」など、セクシャルマイノリティや学歴をネタにした企画もあり、タイトルで炎上を狙っているかも知れないのだが、動画を見ると、女性に対して「出しちゃいけないレベルのブス」などと言っていたのに比べ、男性に対しては言動にまだ気遣いを感じる。これらの動画では、セクシャルマイノリティの男性や「中卒」の人に実際に街なかで出会うのだが、彼らはそういった人たちに対しては優しく接している。少なくともあからさまにバカにする態度は取っていない。だからこそ、なぜ「ブス」認定した女性に対してだけ、あれほど失礼な態度を取れるのか不思議なのである。
2010年には、首都大学東京の学生が「ドブスを守る会」という映像作品を制作し、退学処分を受けている。これは街なかで女性に「ドブス写真集を作りたい」などと声をかけ、その反応を記録した映像だった。この学生たちの説明は「不道徳なものから生じるおかしみを表現したかった」だったという。何が言いたいかと言うと、「振り返りブスババ抜きゲーム」は他にない発想では特になく、不謹慎ネタとしてありふれている。同じ不謹慎なら「振り返り極道ババ抜きゲーム」でもやってみてほしい。
ちなみに「へきトラハウス」は11月3日から始まる「明大祭(明治大学の学園祭)」に出演予定だそうだ。
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