Washington Files

2018年10月22日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

【世界の景色】

(1)NATO同盟関係再確認へ軌道修正

 下院民主党は昨年以来、トランプ大統領がNATOを軽視する発言を繰り返してきたことを厳しく批判、今年7月には、44人もの民主党議員が「自由主義の価値を共有する西欧同盟に対し敬意を表するとともに防衛コミットメントを再確認するべきだ」とする特別メッセージをホワイトハウスに送った。これを受けて下院本会議も同趣旨の決議案を超党派で可決した。

(2)「宇宙軍」創設の見直し要求

 ペンス副大統領は今年8月、陸、海、空軍および海兵隊に加え独立した「宇宙軍」新設を発表した。しかし、軍事関係予算について強大な権限を持つ下院軍事委員会の次期委員長就任が予想されるアダム・スミス議員は「われわれはすでに宇宙資産防衛強化のために『宇宙部隊』創設を検討中であり、大統領が議会と何の相談もなしに勝手に独立軍創設を打ち出すことは容認できない」と反対態度を表明しており、「宇宙軍」の規模の縮小または空軍との関係の再調整が行われる可能性が大きい。

(3)米韓合同軍事演習の再開

 大統領は朝鮮半島非核化交渉を通じ北朝鮮に対し、米韓合同軍事演習の無期限中止を約束してきたが、スミス議員らは「北東アジア軍事情勢の重要度にかんがみ、できるだけ早期に再開すべきだ」と主張してきた。ペンタゴンの中にも同調する動きがあることなどから、非核化交渉で実のある進展が見られない場合、2019年早々にも、議会のホワイトハウスに対する軍事演習再開圧力が強まることになる。

(4)米中貿易戦争拡大

 ペロシ議員ら民主党幹部はかねてから、国内製造業の強力なバックボーンとなっているAFL-CIOなど労組の突き上げを受けて、中国に対しては関税引き上げのみならず、幅広い貿易不均衡是正措置をトランプ政権に要求してきた。このため、民主党が下院を奪回した場合、対中貿易不均衡を抜本的に見直すため、関税のみならず、幅広い品目に対して輸入規制措置を要求ことも否定できない。

(5)パリ協定離脱再検討を要求

 トランプ政権は昨年6月、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を発表、世界を驚かせたが、環境保護政策を支持してきた民主党幹部議員たちは、上院民主党議員団と歩調を合わせホワイトハウスに対し、離脱の見直しを迫る構えを見せている。もし、万が一、中間選挙で上院も民主党が勝利した場合は、その圧力は無視できなくなり、ホワイハウスとしても真剣に再考せざるを得なくなる。

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