Washington Files

2018年10月22日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

【世界の景色】

(1)対中関税戦争エスカレート

 今年春以来の対中関税戦争の仕掛け人としてにわかに注目を浴び始めたホワイトハウス内のピーター・ナバロ貿易・製造政策部長(Director of Trade and Manufacturing Policy)が、中間選挙勝利によって通商代表部(USTR)以上の強大な権限を担うことになり、「中国側が譲歩するまでは関税攻勢をさらに強化する」(ナバロ氏)可能性が大きい。『米中もし戦わば』の著書もあるナバロ氏は共和党内で対中最強硬派として知られ、国内製造業復活を唱導、トランプ大統領の信任もとくに厚いとされる。トランプ・ホワイトがNAFTAを解体し、米国、メキシコ、カナダ3国間の新たな貿易取り決め「USMCA」への移行を決定したのは、ナバロ氏の提唱によるものだった。

(2)対日防衛支出増の要求

 トランプ大統領は北東アジアの軍事バランス維持に関連して、日本の防衛分担増に言及してきた。

 仮に近い将来、とくに2020年でトランプ氏が再選された場合、北朝鮮の非核化達成と引き換えに在韓米軍撤退を決断するシナリオも皆無ではない。その関連で、対日防衛増要求が一段と強まることも考えられる。 

(3)TPP再加入の検討

 ピーター・ナバロ氏はトランプ政権発足前から、アメリカにとって不利だとしてTPPからの脱退を主張してきた。

 しかし、米中関税戦争のさらなるエスカレート、今後北東アジア全域における中国の軍事拡張次第では、拡大する中国の脅威に対抗するために、中国抜きの多国間貿易取り決めであるTPPへの再加入を検討する可能性が残されている。

 すでにトランプ大統領も、再交渉で現状よりアメリカにとって有利な内容が盛り込まれることを条件として、再加入もありうる可能性を示唆している。

(4)米朝関係正常化の加速

 トランプ大統領は中間選挙勝利により、2020年大統領選での再選に向けて自信を強めることになり、外交面、とくに朝鮮半島において北朝鮮の非核化達成を含め「歴史的な成果」達成に本腰を入れることになる。

 中間選後の第2回米朝首脳会談が注目されるが、北朝鮮側が非核化に向けて、保有核戦力および核開発施設を網羅したリスト提出など具体的な姿勢をみせることになれば、それと引き換えに「朝鮮戦争終戦宣言」さらにワシントンと平壌への連絡事務所相互設置の可能性も濃厚となってくる。

 そして完全な非核化が達成された場合は、米朝関係正常化への道が開かれることになる。

(5)核戦力含め軍事力近代化と増強

 レーガン政権当時の「強いアメリカ」構想を継承し、今後、中国の軍事的脅威に対抗するため、核兵器、通常兵器両面の技術革新と軍備拡大に大胆に踏み出すことが十分予想される。 

  
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