与党共和党の議員からも「殺しをやるような国に兵器は売りたくない」(コーカー上院議員)「これは米国第一主義ではなく、サウジアラビア第一主義だ」(ランド上院議員)といった批判が相次いだ。上下両院では近く、サウジへの兵器売却停止を含めた制裁法案が採決される見通し。可決されれば、法案に反対する大統領が拒否権を発動するのは必至で、議会とホワイトハウスの対決が激しさを増しそうだ。
原発輸出に懸念
議会で懸念が高まっているもう1つの問題はトランプ政権がムハンマド皇太子と推進しているサウジへの原発輸出問題だ。石油大国であるサウジは将来の石油資源枯渇に備えてエネルギーの多角化を目指し、その一環として原発導入を決定している。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、同国は当初、向こう20年から25年の間に800億ドルを超える予算を掛けて計16基の原発を建設する計画だった。現在は2基を先行導入するという計画に縮小されたという。米ウエスティングハウス社がトランプ政権の後押しを受けて参入することになっている。
サウジ当局は公式には核兵器開発の意図がないことを表明する一方で、米国との水面下の交渉では、核燃料の自国生産と、核拡散防止条約で規定されている国連査察を拒否する、という2点を主張し、難航しているという。秘密交渉を担っているペリー米エネルギー長官は、3月の議会証言で「トランプ政権は、サウジアラビアが核燃料を自国生産することを容認するのか?」、という質問に対して答えをはぐらかした。
両国の交渉は現在も続いているが、カショギ氏殺害事件とサウジのもみ消し工作が明らかになるにつれ、殺人を犯す国に原発を建設して、彼らが核爆弾を製造しないと信頼できるのか、という懸念が強まった。サウジがカショギ氏殺人事件で発表を二転三転させ、うそを繰り返したことも懸念に拍車を掛けた。
核燃料には4%程度の低濃縮ウランが使用されるが、核爆弾には、濃縮度90%以上のウランが必要だ。サウジが仮に燃料を自国生産するようになれば、密かに核爆弾用の濃縮ウランも生産しかねないという疑念が生じるのは当然だろう。