2024年11月22日(金)

中東を読み解く

2018年11月3日

 反政府サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏の殺害事件で、同氏の遺体がサウジから派遣された暗殺チームによって強い酸系の薬品で溶解処理されていた疑いが浮上した。事件の謎の1つは遺体がどこにあるのか分かっていない点だ。事件は一段と陰惨な様相を深めている。

カショギ氏の婚約者ハティージェ・ジェンギズさん(REUTERS/AFLO)

井戸を調べろ

 米紙ワシントン・ポストがトルコ当局者らの話として報じたところによると、トルコ捜査当局はカショギ氏が10月2日にイスタンブールのサウジ総領事館で殺害され、遺体をばらばらにされた後、総領事館か、近くの総領事公邸の敷地内で酸系の薬品で溶かされた可能性があるとして捜査している。

 総領事館の庭には生物学的な反応が出ており、こうした見方を裏付けているという。サウジ側の発表によると、遺体は殺害したサウジ人チームから地元イスタンブールの協力者に引き渡されたため、所在は不明としている。トルコ側はこのサウジの説明に全く納得していない。

 トルコ捜査当局は当初、事件の前日にイスタンブール入りした暗殺チームの先遣隊3人が市内の森2カ所を見て回っていたことから、遺体がこうした森に埋められたのではないかと見ていた。しかし、大規模な捜索にもかかわらず、遺体埋設の証拠を発見できず、遺体が薬品処理されたのではないかとの疑いを強めている。トルコ当局者の1人は同紙に対し「必ずしも遺体を埋める必要性はない」と指摘している。

 トルコ捜査当局は先週、遺体が流された可能性があるとして総領事館の下水施設を調べた。薬品処理された可能性がある場所として、総領事館の敷地内にある井戸を具体的に調べている、という。このほどトルコ入りしたサウジのモジェブ検察官は遺体の所在について何も明らかにしていない。検察官はむしろ、トルコ側が殺害に関してどのような証拠を握っているのか、その点を知りたがっていたという。仮に遺体が溶かされていたとすれば、永久に出てこない可能性がある。


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