2024年4月16日(火)

赤坂英一の野球丸

2018年11月28日

 矢野、脇谷が頭角を現したときと同様に、ドラフト下位の生え抜き・寺内の台頭は巨人ファンの拍手喝采を浴びた。が、まさにその真っ最中、西武から同じ二塁手のFA選手・片岡が加入してきたのだ。その上、これから定位置争いをしなければならないキャンプで右肩痛、さらにシーズン序盤に左ふくらはぎの肉離れに見舞われ、戦線離脱してしまった。

いまの境遇に不満はないのか

 寺内が一軍から遠ざかってしばらく経った17年のキャンプ中、二軍で黙々と練習に取り組んでいた彼に聞いてみたことがある。いまの境遇に不満はないのか、と。

「いや、一軍で使ってもらえないのは、結局は自分の責任です。こいつを使ってみようと、首脳陣にそう思わせるだけのものを、ぼくが見せられなかったわけですから」

 では、いまだったら、そういうものを見せられるのか。

「そうですね。あの故障から、ぼくも変わりました。選手として成長できたし、練習とか調整方法もかなり変化しています。もう昔の自分ではありません。今年は状態がいいので、首脳陣にぼくを使いたいと思わせられるように、もっと積極的にアピールしたい」

 この願いは結局、叶うことはなかった。が、脇谷がそうだったように、寺内も故障で不遇を託っていた時期、一個の人間として多くのことを学んだはずだ。

 矢野も脇谷も寺内もドラフト下位で、巨人に入ったときはスターではなかった。それでも、短い間ながらもレギュラーの座を掴み、スターよりは少なくても熱烈なファンを獲得している。こういう男たちにこそ、いずれは指導者として巨人に戻ってもらいたい。強く、しぶとく、どれほどの逆境に追い込まれても、なお這い上がろうとすることをやめない精神をチームに根付かせるためにも。そう思うのは私だけだろうか。

  
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