2024年11月22日(金)

中東を読み解く

2018年12月13日

銃撃時に“アラー・アクバル”

 指導者のアルバクル・バグダディの行方も不明のままだ。バグダディは8月、イスラムの犠牲祭に合わせて50分の音声メッセージを発表し、イスラム教徒に「忍耐」と「ジハード」(聖戦)を要求した。メッセージの中では、最近の米国の外交などにも言及し、専門家らは音声鑑定から本物と見ている。バグダディは米国のお尋ね者リストのナンバーワンだが、ハジンに潜んでいるとの説も根強い。

 今回のストラスブールの事件とISとの関係はなお不明だが、フランスの検察当局はテロと断定した。メディアなどの報道によると、犯人はストラスブール生まれの29歳のシェリフ・シェカート。銃乱射時に「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んでいたという。男は犯行時に警察官と銃撃戦となり、タクシーをつかまえて逃走した。負傷しているとされる。

 容疑者には複数の犯罪歴があり、2015年までフランスの刑務所に服役。釈放された後もドイツで窃盗事件を起こし、フランスに強制送還されていた。一般の犯罪者が刑務所でイスラム過激思想に感化されるケースは多いが、シェカートも服役中に過激思想に染まったと見られており、情報機関の警戒リストに載っていた。

 フランスでは2015年に130人が死亡するISによるテロ事件が起こるなどイスラム過激派の標的にされてきたが、マクロン政権は昨年10月末、非常事態宣言を解除した。しかし、今年に入って3人が殺害される事件やパリのオペラ座近くで殺傷事件が起きるなど散発的にテロが発生していた。

 ドイツ国境に近いストラスブールはクリスマスマーケットで有名。クリスマスマーケットは華やかなイルミネーションに彩られ、土産物屋やホットワインの屋台など多数の出店で賑わう欧州の冬の風物詩。2016年12月にはドイツのベルリンのクリスマスマーケットに過激派がトラックで突っ込むテロを起こしている。欧州各国の治安当局は連鎖的なテロが発生しかねないと警戒レベルを上げた。

  
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