2024年11月22日(金)

Washington Files

2019年1月1日

<政府監視委員会>

 当委員会の主たる任務は、政府各省庁の行政命令や政策遂行にあたって、業界との癒着や利益供与、諸外国政府からの献金、謝礼などの授受といった様々な疑惑についての監視と適切な指導にある。

 この点に関連して、エリジャ・カミングズ次期委員長は去る12月19日、現政権下の各省庁当局者、「トランプ・オーガニゼーション」関係者ら合わせて51人宛てに書簡を送ったことを明らかにするとともに「昨年までは公私にわたる利害関係の相克など多くの問題点について説明を求めてきたにもかかわらず、無視されてきた。しかし、1月からはこうしたことは断じて許されない。われわれは十分納得のいくまで徹底して追及していく。関係書類・資料なども調査権限に基づき強制提出させる」と意欲満々の構えだ。

 同委員会民主党側スタッフによると、民主党議員たちが関心を示している項目の中には(1)大統領就任に至る前の実業家としてのトランプ氏のビジネス実態(2)大統領就任後、首都ワシントンの自分のホテルである「トランプ・インターナショナル」をサウジアラビア、ロシアなど諸外国政府関係者に利用させ、多額の利益を得た疑い(3)娘婿ジャレッド・クシュナー氏が「大統領上級顧問」就任に際して、自らの過去のロシア側との接触に関する十分な情報提供を拒否する一方、アメリカの機密情報へのアクセスが認められてきた実態と背景(4)辞任を余儀なくされたスコット・プルイット前環境庁長官が、私的目的のために民間機ファースト・クラスや高級ホテルの利用など公私混同の行状が目立ったにもかかわらず、ホワイトハウスが見逃してきた経緯(5)薬価値上げを決めたホワイトハウスと薬品業界の癒着の有無など、多岐にわたるという。

 カミングズ委員長は地元紙とのインタビューで「われわれの仕事は、ワシントンに対する国民の信頼を回復することにある。とにかくトランプが大統領である間は“暴風雨シーズン”のようなものだが、問題は、嵐が過ぎ去った後、デモクラシー(民主主義)がきちんとした姿に戻っているかどうかだ」と説明している。

<司法委員会>

 下院各委員会の中で大統領弾劾問題を直接審議するのが、当委員会であるだけに、委員長の権限は絶大なものがある。1970年代、同委員会は、ウォーターゲート事件に関連してニクソン大統領の責任を問う白熱した論議の末、本会議での弾劾審議勧告を決議、その直後に大統領は辞任に追い込まれた。クリントン大統領もセックス・スキャンダルをめぐり、司法委員会審議をへて下院本会議での弾劾にさらされた。

 次期委員長に予定されるジェロルド・ナドラー議員も、トランプ大統領をめぐる多くの疑惑について民主党同僚議員たちの間で徹底追及を求める声が挙がっていることから、当然のことながら正式就任直後からその対応を迫られることになる。ただ、これまでのところ、弾劾見通しについては「トランプ氏の法律違反行為は、共和党議員たちも同意せざるを得ないほど歴然たるものでなければならない」として、弾劾そのものについては慎重な姿勢を見せている。

 しかしその一方で最近、ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで「2016年大統領選挙期間中、そして当選後を含め、政権内部、共和党議会における権力乱用、倫理性無視の具体的ケースがいくつもある。トランプ政権発足以来、権限逸脱行為は目に余るものがあり、チェック・アンド・バランスの三権分立が機能しなくなった結果だ。ワシントンに蔓延した“腐敗と汚職の文化”についてメスを入れなければならないことは明白だ」と語り、主として法順守の観点から調査に乗り出す姿勢を示した。

 その具体例として(1)セッションズ司法長官解任後、新たに任命されたマシュー・ウィタッカー長官代理が、モラー特別検察官によるロシア疑惑捜査に対し批判的態度を以前からとってきたことから、同氏を司法委員会に喚問し、政治介入姿勢を中心に追及(2)婦女暴行疑惑などをめぐり上院承認審議で論争の的となったブレット・キャバノー最高裁判事の任命と、議会承認を後押ししたホワイトハウスによる工作の実態解明(3)2016年大統領選への出馬を前提として活動を開始した「トランプ・オーガニゼーション」の疑惑に包まれたビジネス実態の追及(4)大統領によるロシア疑惑関連のFBI捜査妨害の真相、などが対象となる見込みだ。


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