Washington Files

2019年1月8日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

オルークの存在を軽視できない理由

 そんな彼が一躍脚光を浴びるきっかけになったのは、昨年11月の中間選挙だった。保守的気風が色濃く残る地元テキサス州から上院選に立候補、現職で保守本流の知名度もある共和党議員テッド・クルーズ候補相手に真っ向勝負を挑んだからだった。

 出馬当初は「無謀な挑戦」などとマスコミにたたかれることも多かったが、持ち前の“どぶ板作戦”と自分のウェブサイトなどSNSをフル活用したアピールで一気に支持層を広げ、選挙戦終盤にはどちらが勝ってもおかしくないほどの大接戦にまで持ち込む展開となった。最後は、保守本流の重要拠点と位置付けられるテキサスを民主党に明け渡すことに危機感を感じたトランプ大統領自らが2度にわたり応援演説にかけつけるなど、共和党挙げてのテコ入れが功を奏し、クルーズ候補に僅差で惜しくも敗れた。

 選挙戦を通じ、米マスコミの多くは一時、オルーク氏が当選を果たした場合を想定し「2020年大統領選の新人有力候補」として大いに持ちあげたが、中間選挙後は一歩後退した見方に変わっている。

 しかし、それでも、オルークの存在を軽視できない理由がいくつかある。

 ひとつは、カリスマ性だ。

 背丈は歴代大統領中、最も長身だったリンカーン大統領と同じ194センチながら、甘いマスクと物腰の柔らかさで人々を魅了、先の上院選の最中には、州外各地から前代未聞の数千人のボランティア運動員が、投票権がないにもかかわらず応援にかけつけ、大きな話題となったほどだった。

 そのオルーク氏については、最近までクルーズ上院議員再選委員会の戦略部長を務めたジェフ・ロウ氏でさえ、選挙戦終了後「彼は大統領選に出るべきだ。彼ほどのカリスマ性を持った民主党候補は他にいない」とエールを送っている。

 政治経験は別として、このカリスマ性に関しては、今のところ彼の右に出そうな候補は他に見当たらない。

 本人は立候補に関しては「その可能性は否定しない」とだけコメントし、明確な態度を示していないものの、ひとたび正式出馬表明した場合、いったんしぼみかけていた米マスコミの報道も再び息を吹き返すことは間違いなさそうだ。

 次に、人並み優れた選挙資金集めの実績が挙げられる。

 連邦選挙委員会の集計によると、両候補が先の選挙で集めた資金は約1億ドルだったが、そのうちオルーク氏に回った寄付金は7000万ドルに達し、クルーズ氏をはるかに上回っただけでなく、単独候補としては米上院選挙史上最高額を記録した。

 しかも、クルーズ氏に集まった資金のほとんどがテキサス州内の大口献金者からのものだったのと対照的に、オルーク氏の場合、大半が州外支援者たちによるもので、それも一般市民による小口支援が多かった。

 このこと自体、州外からの大勢のボランティアが応援に駆けつけたのと同様に、すでに潜在的な“オルーク待望論”が草の根的に全国に広がりつつあることを示している。

 現在46歳という若さと新鮮さも、民主党候補争いでは有利な要素だ。さらに、もし本選で72歳のトランプ大統領と対峙することになった場合も、全国の有権者を前にそのコントラストぶりを浮き立たせ、強烈な印象をあたえることにもなりうる。

 ちなみに、セオドア・ルーズベルト大統領が初当選したのは42歳、ケネディ大統領が43歳、クリントン大統領が46歳、オバマ大統領が47歳だった。もし、オルーク氏が当選した場合、48歳でオバマ大統領より1歳後になるが、それでも現在、立候補がうわさされている他の民主党候補に比べるとダントツの若さだ。

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