2024年4月20日(土)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年1月9日

保守派コメンテーターの圧力

 トランプ大統領は国境の壁建設に、異常なまでのこだわりを見せています。その背景には、支持者に影響力を持つ保守派コメンテーターからの圧力があります。例えば、保守系政治解説者のアン・コールター氏は、「壁の建設が実現しなければ、トランプにはレガシー(政治的功績)はない」「壁の建設が進まないなら2020年、トランプには投票しない」とまで言い切っています。

 そこで、トランプ大統領は是が非でも壁を建設しようと必死になっています。壁の効果に関して、「イスラエルでは壁は99.9%機能している」と主張しています。

 壁建設費については、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を通じて、メキシコが費用を支払うというのです。しかし、どのようにしてメキシコが支払うのか、具体的な説明を行っていません。

 さらに、「コンクリートではなく、(米国製の)鋼鉄の壁建設を目指す」「製造業の雇用を創出する」とも語り、国内の鉄鋼業界で働く労働者に向けてアピールをしています。

 トランプ大統領の壁建設に対するこだわりはポスターにも現れています。「THE WALL IS COMING(壁が建設されつつある)」というメッセージが印刷されたポスターを作成しました。ポスターのレイアウトを壁にして、「COMING」の「O」の文字の中にも壁を描き、不法移民の流入を防ぐという意味を含めています。

 要するに、トランプ大統領はジェームズ・マティス前国防長官、ジョン・ケリー前首席補佐官及びH・R・マクマスター前大統領補佐官といった退役軍人の助言には聞く耳を持たず、支持者に影響力のある保守派コメンテーターの意見には耳を傾けるわけです。


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