メッセージアプリを基盤に
攻勢に出るラインペイ
こうした中国のキャッシュレス決済の〝クレジットカード外し〟や〝データ活用〟の取り組みは日本においても参考となる。
日本におけるクレジットカードの決済手数料は平均では3%だが、零細事業者で5%を超えるケースもある。クレジットカードの導入においては、VISAやJCBなどの国際的な決済ネットワークを提供している国際ブランドやイシュアと呼ばれるクレジットカード発行会社、加盟店を獲得し管理するアクワイアラなど複数のプレーヤーが料金を徴収する構造のため、決済手数料の引き下げには限界がある。
日本のQRコード決済ではクレジットカードで支払うタイプと銀行口座から直接引き落とすタイプが混在している。前者のコスト構造はクレジットカードと同じだが、後者は「クレジットカード会社のネットワークを介さず、データセンターの数値を書き換えるだけで決済を行えるため、中間コストがかからない」(あるモバイル決済事業者の技術者)。そのため決済手数料を引き下げることが可能だという。
また、日本では中小事業者がキャッシュレス決済を導入するにあたって必要な初期コストを嫌い、キャッシュレス決済が普及してこなかった。しかし、QRコード決済ならば、専用端末の必要なクレジットカードとは違い、QRコードとスマートフォンさえ用意すれば導入でき、初期コストがほぼゼロだ。
中国における成功パターンである〝クレカ外し〟とQRコード決済の二つを満たし、その先のデータビジネスを考えると、もっとも先行しているのがLINEの提供するラインペイだろう。同社はメッセージアプリ「LINE」において国内月間アクティブユーザー(MAU)7800万人を抱えている。また、2018年11月にはみずほフィナンシャルグループと共同で新銀行を設立することを発表した。
会見で同社の出沢剛社長は「日常生活に密着したサービスを提供したい」と語った。同社は今後、毎日何度も立ち上げるメッセージアプリをハブとして、決済をパイプに、さまざまなビジネスを展開していくだろう。
同社は2014年からキャッシュレス事業を行っており、昨年からQRコード決済を導入した。ユーザー向けには、個人間送金を試すとローソンやマクドナルドの商品が無料でもらえたり、銀行口座からチャージすると抽選で人気アイドルグループ「欅坂(けやきざか)46」のチケットをプレゼントされたり、割り勘機能を使うと最大5万円がもらえるくじをプレゼントされる、といったキャンペーンも続けてきた。その結果、登録アカウント数は3000万人を超えている。
その他にもラインペイからは矢継ぎ早に関連サービスが打ち出されている。公共料金や通販、保険料の支払いができる「請求書払い」、個人資産を管理できる「家計簿」、さらに「スマート投資」や保険も追加された。他にも信用スコア「LINEスコア」と個人向けローンなどの展開も予告されている。LINEが金融商品のプラットフォームにもなりつつある。