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2019年3月4日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

金正恩は交渉への意欲失う?

 ハノイでの会談に話を戻す。交渉が物別れに終わった経緯については、すでに繰り返し報じられているので立ち入るのは避ける。問題解決へ進展をみなかったのは残念としても、トランプ大統領が安易な譲歩をするのでは、という当初の懸念が解消されたことは歓迎すべきだろう。

 国務省で北朝鮮との交渉に当たったエバンズ・リビア元次官補代理は3月2日付けの産経新聞で、譲歩せず席を立った判断を「賢明」と評価。1994年の「枠組み合意」の米側首席代表、ロバート・ガルーチ氏も同様の見解を示している(3月1日のABCニュース)。

 ハノイ会談の物別れで事態は膠着状態に陥ると予想される。それを打開できるかどうかは、北朝鮮が今回表明した寧辺周辺に加え、ウラン濃縮を含む他の施設について、どの程度、廃棄、凍結に応じてくるか、それを米国がどう評価するかにかかってくる。

 トランプ大統領は第3回会談の見通しについては明言を避けているが、ポンペオ国務長官はきびしい見方を隠していない。気になるのは、李容告外相の会見に同席した崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官の発言だ。崔女史は、「金正恩委員長は米国の損得勘定について理解に苦しんでいるようにみえた」「委員長が今後米朝交渉への意欲を失うのではないか、という印象を受けた」と述べた。

 独裁国家で、外務次官ごときが最高指導者の胸の内を忖度、公言すること自体驚きだが、金正恩の指示を受けての発言としたら、第3回会談の早期開催の可能性は遠のく。一度失われたモメンタムは回復するのが難しい。今回、米国も北朝鮮ともに、得たものはなかった代わりに失ったものもなかった。失地回復の必要がないとすれば、このことも次回首脳会談を不透明なものにするだろう。

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