2024年7月16日(火)

ネット炎上のかけらを拾いに

2019年3月6日

 この件を報じた関西テレビ(https://www.fnn.jp/posts/2019030119214710KTV)についても言いたい。関西テレビはこの件を、1分ほどのニュースにした。ポスターについて「『下着が見えている』などと批判の声があがっているのです」と紹介したあと、「嫌な印象ではないけどちょっと過激」という男子高校生、「さわやかでいいと思います」という20代女性、「露出が多くて嫌な気持ちになる」という10代女性の声を紹介している。

 賛否両論を取り上げて、いっちょ上がりの構成である。ポスターの背景に「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」の文脈があることには一切触れられていない。

 「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」というキャッチコピーは、アニメのキャラクターたちが自らパンツ丸見えのコスチュームを着用することへのエクスキューズである。このコピーは、キャラクターのコスチュームが過激ではないことを意味しない。むしろ、客観的に見れば恥ずかしい格好である、ことを意味する。それが制作者の意図である。制作者の意図を汲むのであれば、これは過度に性的な格好である。なぜそこまで、関西テレビは言及しないのだろう。

自衛隊の考える「品位」ってなにかね

 ここまで書いておいてなんだが、筆者は太ももやパンツが見えていることが、けしからんと言っているわけではない。パンツが見えているキャラクターとして有名なワカメちゃん(サザエさん)がポスターに登場したところで、パンツをしまえとは思わない。そこに性的な意図を感じないからだ。

 しかし、「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」には性的な意図がある。性的な意図があり、さらに性的な意図を指摘してきた人に対することわりが最初から用意されている。アニメを楽しむぶんには、「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」は面白いジョークだろう。しかし、公共の場にポスターを貼り、内輪ネタであるはずの「パンツじゃないから恥ずかしくないもん!」を真に受けて「性的ではないと聞いている」と釈明する自衛隊滋賀地方協力本部には開いた口がふさがらない。

 テレビではたびたび、「自衛隊の裏側全部見せちゃいます」的な番組が放送される。そこで目にするのは、厳しい規則に耐え、懸命に訓練に励む若者たちの姿である。教育期間内では男性は丸坊主、女性はベリーショート。教育期間を終えても、品位を保った格好が求められるそうだ。もちろんプライベート時も。

 そういった倫理観で回っているおカタい組織と認識しているので、広報用ポスターに限って「品位」がさっぱりと捨て去られるのが謎でならない。もしかして、こうでもしないと人が集まらないという自虐なのだろうか。

  
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