2022年8月15日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年3月26日

»著者プロフィール
著者
閉じる

海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

トランプの「政争の具」

 トランプ大統領は、「共謀はなく司法妨害もなかった。完全かつ潔白が証明された」と自身のツイッターに投稿し、「勝利宣言」を行いました。トランプ大統領を応援する保守系のFOXニュースの司会者ショーン・ハニティー氏は、番組の中で「共謀も司法妨害もなかった。何もなかった。魔女狩りは終わった」と語り、トランプ大統領よりも早く勝利宣言をしています。

 さらに、トランプ大統領は記者団に対して「大統領がこのような捜査を受けなければならないのは国家の恥だ」と語気を強めました。自分はロシア疑惑の捜査で22カ月間も、不当に扱われてきたといいたのでしょう。

 20年米大統領選挙で再選を目指すトランプ大統領は、モラー報告書を最大限活かして、議会民主党を攻撃し、支持者に対して「モラーの捜査は魔女狩りで、ロシア疑惑はでっち上げだったことが証明された」と、強くアピールするでしょう。今後、民主党からの批判を封じ込めるための「攻撃材料」として報告書を活用する可能性は極めて高いといえます。

 つまり、モラー報告書は「政争の具」と化する運命にあるのです。

議会民主党の対策

 では議会民主党は、バー司法長官のモラー報告書の概要を記した書簡に対して、どのような対策を講じるのでしょうか。

 民主党のキーパーソンは、下院司法委員会のジェロッド・ナドラー委員長です。ナドラー委員長には「召喚状」という切り札があります。

 司法妨害に関して「証拠不十分」と判断したバー司法長官に「召喚状」を送り、宣誓の上で議会証言をさせるでしょう。そのうえで、モラー特別検察官にも召喚状を出し、双方の矛盾を突きます。

 仮にバー司法長官とモラー特別検察官の議会公聴会が実現すれば、公聴会は「政治ショー」となり、来年の大統領選挙に向けて、民主党が政治的得点を稼ぐ舞台に変わることが予想されます。特に、民主党左派の議員は公聴会において、トランプ大統領に対する弾劾を進めるための「判断材料」を探すでしょう。

 民主党はモラー報告書の全面公開を求めています。今回のロシア疑惑に関する捜査には、2500万ドル(約25億5000万円)の費用がかかりました。米国民の税金です。従って同党は、「米国民には全面的な捜査報告書の内容を知る権利がある」と主張しています。

 そこで、ナンシー・ペロシ下院議長は「バー長官による米議会に対する非公開の捜査結果の報告を拒否する」と声明を出しました。20年米大統領選挙を視野に入れて、ペロシ議長には全面的公開を望む世論を民主党の見方につける意図があるとみて間違いありません。

 結局、トランプ大統領と同様、議会民主党もモラー報告書を政争の具にします。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る