ディズニー、アマゾンが従業員の最低時給を15ドルにすることに応じた
一方でバーニーにはこの4年で積み重ねてきた実績がある。一躍時の人となったことで、理想を実現するためのパワーを得ることができた。例えば今回の集会ではディズニー社の労働組合を代表する人物が「バーニーの助けでディズニー、アマゾンなどの大企業が従業員の最低時給を15ドルにすることに応じた」と語り、カリフォルニア大学教職員組合もバーニーが組合の力を増大し大学側と交渉するサポートを行った、と語った。
しかし最低賃金の引き上げは中小企業の体力を削いでいる。バーニーが主張する「低価格での健康保険、大学無償化」が実現できれば最低賃金の引き上げがなくとも人々の生活は今よりも安定する。すべてを実現できれば素晴らしいが、やってくるのは超インフレ社会かもしれない。多くの米国人がバーニーを社会主義者と呼び恐れるのは、そのようにして現在の生活が脅かされる可能性があるためだろう。
もう一つの懸念は、バーニーに触発される形で民主党リベラルの若手が育ってきている、という点だ。今回の選挙にはすでにカリフォルニア州選出のカマラ・ハリス上院議員、ニュージャージー州選出のコリー・ブッカーズ上院議員が出馬を表明している。
特にブッカーズ議員はその考え方が非常にバーニーに近い。予備選でこうした若手がバーニーの支持層に食い込む可能性も捨てきれない。もっともバーニーは「自分以外にトランプを破れる候補がいない」という理由で出馬を決意した、と語っており、もし若手が対立候補として十分だと判断すればキャンペーンを中止してサポートに回る可能性もある。
演壇に登場したバーニーはなぜか額に絆創膏を貼っており、4年前よりやや髪の毛も寂しくなった印象がある。しかしその声は相変わらず張りがあり、後期高齢者と思えないほどエネルギッシュだ。人々の心を掴む演説も健在だ。
バーニーという人物は間違いなく高潔であり、理想を語る人である。ドンキホーテかも知れないが、米国民に「普通の国家とは何か」を考えさせるきっかけを与えた。残念ながら今回の選挙でもバーニーが勝つことはないかもしれない。しかし前述の若者のように、社会を変革したいと望む人々がバーニー支持者の中から育てば、米国の将来にとっては大きな財産になるだろう。
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