ニューヨークでは官民両方によるビル、インフラの再開発が急ピッチで進んでいる。マンハッタンでは3月15日に東京ドーム2個分以上の広さがある巨大複合施設「ハドソンヤード」の商業棟がミッドタウンの西部にオープンした。三井不動産は昨年10月にこの「ヤード」の中に51階建ての高層オフィスビル「55ハドソンヤード」を完成させている。
さらに2022年までにはこの高層ビルの2倍の規模の「50ハドソンヤード」を建設する計画で、2棟合わせた投資額は5500億円になる。「50ハドソンヤード」は、01年の米同時多発テロで倒壊した世界貿易センタービルの跡地に建てられた「ワン・ワールドトレードセンター」とほぼ同じ規模で、単体のオフィスビルとしてはマンハッタンで最大級となる。
東急不動産はセントラルパークの南東部の「425パーク・アベニュー」と呼ばれる高層オフィスビル(47階)を総事業費1000億円超をかけて建設中で、今年後半に完成する。ニューヨーク市やニューヨーク州当局も老朽化したインフラ施設の更新に力を入れており、空港、橋梁、地下鉄なども含まれている。
新名所が誕生
ニューヨークでは01年の同時テロまでは20年以上、大きな再開発は行なわれてこなかった。このため、オフィスビルを含めインフラ施設の老朽化が進み、世界の中心都市としての競争力の劣化が懸念されてきた。
ニューヨークの買い物スポットと言えば、これまではタイムズスクエアや高級ブランド店が並ぶミッドタウンなどだったが、「ハドソンヤード」がオープンしたことで、新名所ができたことになる。
「ハドソンヤード」は長く未開発だった区域で、12年の夏季オリンピック候補地として整備される計画があった。しかし、ニューヨーク市は立候補したものの、ロンドンに敗れたため、民間による再開発事業になった。
鉄道の操車場跡地の上に人工地盤を作ってビルを建てる工法を用いており、「商業棟」には100以上の店舗が入居、日本からはユニクロ、無印良品などが出店している。
開発が盛んなのはマンハッタンだけではない。イーストリバーを挟んだクイーンズ、ブルックリン地区でもスタートアップ、ベンチャー企業が多数誕生、西のシリコンバレーと対比されるほどになりつつある。4月にはブルックリンにベンチャー企業が多数入居した16階建ての船のような形をしたオフィスビル「Dock72」(写真参照)がオープンする。開発に共通しているのは川沿いのウォーターフロントが好まれている点だ。