WEDGE REPORT

2019年3月28日

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朴承珉 (パク・スンミン)

在韓ジャーナリスト

在ソウルジャーナリスト。時事通信ソウル支局記者を経て、「文藝春秋」「週刊文春」のソウル特派員。長年、北朝鮮問題をウオッチ。平壌や開城工業団地、板門店、金剛山など7回以上北朝鮮入りして取材。日韓メディアに寄稿している。

仲裁者としての韓国を拒否

 一方、北朝鮮が非難しているのは米国だけではない。崔外務次官は、「米国の同盟である南朝鮮(韓国)は(米朝間の)仲裁者ではない」と述べた。なお、統一新報は「南朝鮮(韓国)が仲裁者、促進者の役割をすると騒ぐのは僭越な仕打ち」、24日には「韓国当局が、同族である我々に対する米国の制裁と圧迫の策動に追従しながら操り人形役をしている」とし、文在寅政権を連日激しく非難し、韓国政府が誇ってきた仲裁者の役割を拒否した。

 ここで、「仲裁者」という言葉だが、厳密に言えば、韓国は韓半島問題おいて、仲裁者ではなく当事者の一軸であるため、北朝鮮の非核化問題で仲裁者という表現は正しくない。自分のことでもある問題を人のことのように話しているためだ。むろん、北朝鮮がそのような意味での仲裁者ではないと言ったのではなく、「韓国は我々の味方ではなく同盟の米国側の味方だ」と非難する言葉だが。

 また、北朝鮮は昨年、板門店での南北会談で合意し、南北が一緒に運営してきた開城の「南北連絡事務所」から22日、"上部の指示"と一方的に撤退したが、二日ぶりに再び出てくると通知してきた。トランプ大統領が22日(現地時間)ツイートに、追加的大規模制裁の撤回を指示したことを受けて、南北連絡事務所に復帰したものとみられる。北朝鮮が南北間の連絡事務所を 米朝間の交渉に利用することは別にして、この過程で韓国の存在感はまったく見えなかった。ただ、北朝鮮の行動に引きずられている格好だ。

 ところが、北朝鮮当局者らが米韓に脅迫しながら、実は今後さらに困難な状況に置かれることをすでに覚悟しているようだ。「これから90年代の『苦難の行軍』の時よりもっと大変な時期が来ることもあり得る」「水と空気さえあれば、いくらでも生きて行ける」と、制裁が長期化する可能性を示唆し、市民たちが精神武装するように喚起させた。

 しかし、彼らの戦略はすでに読まれてしまった。北朝鮮は現在の状況で使えそうなテコがない。いまにきて核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射はもうできないだろう。考えられるのは、人工衛星(実際には長距離ミサイルに当たる)や短距離ミサイルの発射ぐらいだろう。もうこれといった戦略がないはずだ。

 1991年に北朝鮮工作員と一緒に潜水艇で北朝鮮に入って金日成主席に会った人がいる。当時、韓国の学生運動家の中では「主体思想派のゴッドファーザー」と呼ばれた金永煥氏。ところが、金氏は北朝鮮体制に幻滅を感じ、思想転換した。最近、「北朝鮮は完全な非核化を追求する意志が1%もない」「核保有は、北朝鮮の国是であり、金正恩の祖父と父親が残した遺訓の中核の中の中核」と述べ、「金正恩が核を放棄すれば、党・軍幹部が国家も裏切り、父親も祖父も裏切ったと考えるだろう」と主張した。

 ところが、米国との共同歩調を取るには消極的で、北朝鮮との経済協力に積極的な文政権は、米国に信頼を失いつつ、北朝鮮にもそっぽを向けられたサンドイッチのような立場になっている。このような状況に、文在寅大統領は北朝鮮との交戦で戦死した55人の将兵を称える「西海(黄海)守護の日」の行事に就任後、2年連続参加していない。金正恩委員長の機嫌を取るためだろう。

  
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