2024年4月19日(金)

Wedge REPORT

2019年4月1日

 右ひじに固めのサポーターを巻き、エルボーまがいのかち上げも多用。そして「自分のペースで行っている」と批判されがちな立ち合いや土俵際での駄目押し、そして懸賞金の受け取り方にまで「下品だ」と最近の白鵬は散々叩かれまくっている。これらの行為がいいか悪いかで言えば相撲道の観点では道から外れており、糾弾されても仕方がないだろう。だが勝利至上主義の白鵬の考えからすると、勝つための手段としてのぎりぎりの戦法であって明確な反則を犯しているわけではないし、加えて自分の態度にまでとやかく言われる筋合いなどないということなのかもしれない。

相撲道とは何か

 白鵬は古き時代から伝統として続く相撲道を完全に理解していない。これは残念ながら否定できないだろう。しかしながら、その相撲道とは何なのだろうか。専門家でもない限り日本人の我々はもちろん、現役の力士を含めて相撲関係者の多くもおそらく詳細についてまでは頭に叩き込まれていないと思う。

 横審や協会に属する有識者やお偉方はただカミナリを落とすだけでなく今回の一件を機に当事者の白鵬と一度、互いが考える相撲道についてじっくりと膝を突き合わせる必要があるのではないだろうか。協会側が急速に押し進める大相撲のスポーツ化によって今の角界は相撲道とのバランスを保つことが難しくなっているのもまた事実。

 実際に多くの人が口先だけで相撲道をきちんと解釈できていない中、白鵬も混乱しているかもしれないし、もしかすると横綱は横綱なりに時代背景に沿った新しい柔軟な発想を持っているかもしれない。曲がりなりにも白鵬はかつての〝大相撲暗黒の時代〟を支え、ここまで踏ん張り続けてきた末に大横綱になった偉人。多少なりとも主張を口にする資格はあるはずだ。協会側が大相撲を従来の枠組みから外し、プロスポーツビジネスとして今後も発展させていきたいのであれば、増え続ける外国人力士側の主張も聞き入れてすり合わせを行うことは決してマイナスではないだろう。

 もし、このまま白鵬だけが毎度のごとく単に悪者として罰せられるだけで終わることになれば、両者のミゾは埋まらず再び同じような不祥事が繰り返されそうな気がしてならない。

  
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