2024年12月23日(月)

Wedge REPORT

2019年3月25日

 まだ空虚感に苛まれている人は多いだろう。シアトル・マリナーズのイチロー外野手が現役生活にピリオドを打った。日本の東京ドームで行われたMLB開幕2連戦(対オークランド・アスレチックス戦)に2試合連続で先発出場し、いずれも安打を放つことは出来なかったものの最後まで多くのファンを魅了。

 惜しまれつつユニホームを脱いだ。あれから数日が経過したが、日米の両国において漂う〝イチローロス〟は沈静化する気配はない。それだけレジェンドが残してきた功績はとてつもなく大きかったということだ。

 日本はもちろん米メディアも引退したイチローの栄誉を称え、賛辞を送っている。日本のファンだけでなく米国内、特にマリナーズの地元シアトル在住のファンたちも同様だ。そりゃあ、そうだろう。これだけのレジェンドが身を引く決断をしたのだ。敬意を評して華々しく送り出してあげるのが常識であり、筋だと個人的には考えている。

 ところが報道の中にはほんの僅かだが一部、例外もあった。実際に今回、イチロー引退の流れについて疑問符を投げかけ、ひいてはチクリと刺すようなトーンの記事や芸能人発のブログがネットでも散見された。すでにご覧になった人たちも多いだろう。

(USA TODAY Sports/reuters/aflo)

 しかも驚かされたのは発信した人たちが比較的シビアな目を持つ米国人ではなく、いずれも日本人であったという点だ。何でイチローとは同じ日本人のはずなのに米国人よりも素直になれず、イチャモンを付けたくなるのだろうか。三者三様と言ってしまえばそれまでかもしれないが、とても不思議で逆にこちらが疑問符を投げかけたくなった。

 「引退は事実上のクビ」と過激な題名をつけた記事もあれば、MLB開幕戦という真剣勝負の舞台をイチロー引退興行の場にしてしまうことはナンセンスととらえていたトーンのコラムも目にした。

 某日本人タレントに至っては自らのブログで「くだらね~」「茶番」「シラケ」と猛批判しながらも〝炎上〟してしまったことで即座に苦しい弁明に追われ、火消しに奔走させられるハメになっていた。

 それにしても…だ。当日現場で歴史的なシーンを取材した側からすれば、何だかとても嫌な気持ちになった。とにもかくにもがっかりさせられたのは日本が米国、いや世界に誇るスーパースターの引退という華々しい舞台だったにもかかわらず、前出のこうした記事やブログによって何となく水を差されてしまったこと。

 何でもかんでも斜に構えれば注目が集まりやすいと考えるのではなく、もっと純粋な気持ちでレジェンドを称えられなかったのだろうか。これまでイチローから数々の夢と希望を与えられてきた立場からすれば、とても残念でならない。


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