2024年12月9日(月)

Wedge REPORT

2019年4月1日

 平成最後の本場所は後味の悪いものになった。横綱白鵬が春場所で42度目の賜杯を獲得し、歴代最多優勝の自己記録を更新。しかし優勝インタビュー中、三本締めを行ったことで横綱審議委員会から問題視され、日本相撲協会から呼び出しを受けて師匠の宮城野親方(元前頭竹葉山)とともに事情聴取を受けた。協会のコンプライアンス委員会が処分案を検討した後、その答申を受けて再度協会の理事会で審議されるという。今後の展開次第では「懲戒処分」が下される可能性もありそうだ。

(PicturePartners/Gettyimages)

 本来ならば、千秋楽の三本締めは表彰式やインタビュー終了後の「出世力士手打式」で行司らが行うべきこと。さらに厳密に言えば、その次に行われる「神送りの儀式」で御幣(ごへい)を持った行司が出世力士たちに胴上げされ、土俵祭でお迎えした神様に天へ帰っていただくことで本場所は閉幕を迎える。これらの流れを考えれば、1人の横綱がインタビュー中に手締めを強行したことは、確かに協会側がコンプライアンス規定で定めた「土俵上の礼儀、作法を欠くなど、相撲道の伝統と秩序を損なう行為」に抵触することにつながるかもしれない。

 ただ、どうしても違和感が残る。本当に白鵬だけが悪いのだろうか。ネット上でも激しい〝白鵬バッシング〟が起きているのは承知している。「無法横綱を許すな」などといったかなり乱暴な言葉も散見されるものの、ここまで個人攻撃されるようなレベルの問題とは思えない。「平成最後の場所で盛り上げようと思ってやった」というのが白鵬の弁明だ。決して悪意などなく、あくまでもファンサービスの一環として行ったことが裏目に出てしまった点には、少しばかり情状酌量の余地があってもいいような気がする。

 ちなみに協会側はコンプライアンス委員会とともに、白鵬が一昨年九州場所の優勝インタビューで万歳三唱をして厳重注意を受けた一件についても経緯等の調査を行う方針を固めている。きっと横審や協会の中には「一度ならず二度までも」という怒りを募らせている面々もいるのであろうが、その一方で「白鵬ばかりに対してヒステリックになり過ぎではないのか」との声も関係者の間に派生してきていると聞く。

 そうした声に則って言わせてもらえば、横審や協会側には白鵬ばかりを叩くのではなく自らも正さなければならない矛盾点がいくつかあると思う。まずは一昨年の「万歳三唱」、そして今回の「三本締め」とそれぞれが白鵬の優勝インタビュー中に強行された際、場内の観客はいずれの時も一緒になって大盛り上がりしていた事実を再認識する必要があるだろう。


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