3月24日から26日までの国賓としてのフランス訪問で、習近平は、300機のエアバス航空機を含み、電力や造船を合わせて約400億ユーロ(約5兆円)の契約をして、マクロン大統領を喜ばせた。以前から、中国は、フランスからは航空機、機械機器、エネルギー、食糧等を多く輸入していて、この構図は今回も変わらない。また、中国は、近年、フランスの基幹産業への投資を活発化してきた。例えば、航空機産業で有名な都市トゥルーズのブラニャック空港の株49.99%を2015年に中国国有企業と香港の投資会社との合弁会社が取得したり、高級ワインの産地であるボルドーのワイナリーを150以上買収したりした。それに対して、フランス国内から警戒心は起こるものの、ワイナリーの売却は容易には止められないそうだ。中国は、もはやボルドー・ワインの最大の輸出国になっている。
3月26日、マクロン大統領は、EUとの結束、ドイツとの協調を演出し、中国には、多国間主義の重要性で一致し、イラン合意や気候変動のパリ協定で「戦略的パートナー」として協力できるとしてエールを送った。が一方、アフリカ等への中国の進出で、フランスの影響力が弱まったり、状況が悪化したりすることを懸念している。
4月9日には、ブリュッセルで、EUと中国との首脳会談が開催される。それに向けて、3月21-22日に開催されたEU首脳会議では、EU委員会が3月12日に発表した「EU・中国戦略概観」を土台として、中国問題も討議された。EU諸国は、中国の不公正な補助金や技術の強制移転を改めさせるため、WTO改革を目指す方向だと言う。EU議会でも中国への警戒心は高まり、サイバー・セキュリティに関して、中国を名指しで非難し、EUの安全保障を守る重要性が指摘された。EU内の対中脅威認識は高まっている。
しかし、どこまで中国に対する外交政策で、EU諸国の足並みを揃えることができるか。欧州諸国の諸事情は異なり、戦略的で選挙がない習近平率いる中国共産党を相手に、なかなか難しい問題だろう。
中国としては、米国との首脳会談を控え、EU及び欧州諸国との関係を上手く固めておくことで、強い姿勢で米国との会談に臨みたいのだろう。
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