2024年4月27日(土)

前向きに読み解く経済の裏側

2019年4月15日

 余談ですが、実は株主有限責任という法律があるため、資本金1円の会社が「100円儲かるか100円損するか」という投資をすることは合理的とも言えます。オーナー社長は資本金を失うだけで、あとは銀行が損を被ることになるからです。

 もっとも、日本の大企業は倒産して従業員が失業することを極端に嫌いますから、オーナー社長の利益だけで意思決定がされるわけではありません。そもそも取引銀行がそのような投資は認めないでしょうし。

 このように、オーナー社長はリスクを嫌うので、期待値がプラスの案件しか投資をしません。そうであれば、企業収益の期待値はプラスでしょう。そして、上記のように零細投資家であってもオーナー社長と同じ立場ですから、零細投資家の持っている株についても利益の期待値はプラスでしょう。

 したがって、株式に長期投資をすれば、期待値としては預金金利よりも高い配当利回りが得られるはずです。配当しない企業もありますが、その場合には利益が内部留保されるので、長期的にはPBRが一定だとすれば、株価が上昇していく、ということになるはずです。

数年前、経済学者トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』がベストセラーとなり、その中のr>gという式が話題となりました。株式投資等の利益率が経済成長率より大きいので、格差は拡大する、ということですね。

 これに意外感を持った人が多かったようですが、資本家や投資家は期待値がプラスの案件にしか投資しないのですから、むしろこれは当然だと言えるでしょう。

 ちなみに「経済成長率は金利と等しいはずだ」という考え方があり、それに従えば、ピケティの理論は「株への投資は期待値としては金利より高い」ということになりますから、本稿の内容と似ているわけですね。

経済は成長するから株価も上がるはず

 経済は、基本的に成長します。バブル崩壊後の長期低迷期、日本経済はゼロ成長時代が続きましたが、その間も世界経済は成長を続けていました。つまり、世界中の株を全部持っていれば、企業の利益が増え、株価が上がっていくはずなのです。

 実際には、世界中の株を全て持つことはできませんが、その一部を持つことは期待値としてはプラスだ、と言えるでしょう。特に、世界中の株に分散投資する投資信託などを長期保有すれば、期待値としてのリターンはプラスになるはずでしょう。


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