監督を擁護する声も多い
だが四面楚歌かと思いきや、取材を進めてみると地元や星稜のチーム内からは逆に林監督への擁護論が意外に多く飛び出していることに驚かされる。その中で、一際力を込めながら次のようにフォローするのは同校OBだ。
「非常に実直な性格の持ち主で『野球以外の大事なもの』についても熱心に指導していた。皆がここまでチーム一丸となってきたのは監督のおかげ。もしここで退任という形になってしまったら、チームは空中分解してしまう。今在籍しているメンバーの中で監督の退任を望んでいる者なんて誰一人としていない。彼は今、これだけ世の中からバッシングを受けている。
懺悔の道を歩んでいるのだから、再登板のチャンスを与えてあげて欲しい。しかも忘れてはいけないのは、彼はあくまでも〝グレーゾーン〟のままになっているサイン盗み行為について、これを機会に真剣に話し合う土台を作ってほしいと願っていたこと。習志野さんを侮辱し、ルールを破ってしまったことは批判され、ペナルティを与えられて然るべきですが、監督復帰の道まで閉ざされてしまうのは違うと思います」
ちなみに林監督は同じく星稜OBでニューヨーク・ヤンキースや巨人などで活躍した松井秀喜氏の1つ年下。27年前の夏の甲子園には星稜の正遊撃手として出場し、そこで偉大な先輩が明徳義塾を相手に5打席連続で敬遠された歴史的シーンも間近で目に焼きつけている。
一体、林監督の去就はどうなるのだろうか。いずれにせよ1つ言い切れるのは、理由はどうあれ林監督が「星稜の歴史」に汚点を残してしまったということだ。そして、その最大の犠牲者となっているのは、目標に向かって厳しい練習を積み上げながらも監督不在となってしまった名門・星稜野球部の面々である。こうした事実を忘れてはいけない。
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