中島恵の「中国最新トレンド事情」

2019年4月25日

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中島恵 (なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年山梨県生まれ。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社)、『中国人富裕層はなぜ「日本の老舗」が好きなのか』(プレジデント社)『日本の「中国人」社会』(日本経済新聞出版社)などがある。

いつも競争に巻き込まれてしまう

 その上、彼らを悩ませているのが、中国に住むママ友や学生時代の友だちとの“はり合い”だ。知り合いのある中国人女性は、こう打ち明ける。

 「東京では、教育熱心な家庭と、のんびりしている家庭があり、皆が皆、熱心ではないように見えるので、自分なりにやっていけばいいのかなとも思えるのですが、中国に住んでいるママ友や、学生時代の友だちのSNSを見ていると、とにかく教育熱心なので、焦る気持ちがものすごく強くなってしまい、自滅しそうになるんです」

 中国では、幼稚園だけでなく、小学校でも子どもの送迎を親(または祖父母)が担当するのは当たり前。学校の帰りにそのまま、塾や習い事がある場所に送り届け、週末も親は送迎に奔走する。もし子どもが2人いれば、習い事の送迎のためにクルマを2台持ち、夫は長男を、自分は長女を送るという人もいるほどだ。

子どもの下校時間に学校に迎えに行く中国の父母たち

 「1週間のうち6日間も英語や算数、絵画、書道、バイオリンを習わせていて、その上、自分も子どもの宿題につき合って、夜遅くまで机に向かっている人が多いんです。そんな必死な姿を見ていると、このまま日本に住んでいていいのか、日本の教育だけで、将来、中国の友だちの子どもと対等に戦っていけるのか、と考え込んでしまうんです」

 子どもの個性や特徴はそれぞれであり、その子どもにあった生き方があると思うが、中国に住む友だちの子どもと自分の子どもを学力の面で比較してしまう、というのは何ともやりきれない状況であり、子どももかわいそうに思えてくる。だが、せっかく多様な文化を学べる海外に住んでいながら、常に母国だけを見て生活していると、そういう気持ちになってしまうことも理解できるし、それは日本人の海外駐在員にも、大なり小なり起こり得る「共通の問題」ではないかと思う。

 よく知られているように、中国は厳しい競争社会だ。進学、就職、すべてにおいて競争を生き抜き、上に立ったものが「勝ち組」になれる。自分自身はもちろんのこと、子どもの教育についても、他人とのはり合いや競争は日常茶飯事だ。

 「人は人、自分は自分」と割り切れず、いつも競争に巻き込まれてしまう生活はつらいと思うが、中国人ママ友たちの会話からは、日本に住んでいても、中国人の競争社会から完全には抜け出せないという、もどかしい思いが伝わってくる。


  
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