海野素央の Love Trumps Hate

2019年5月2日

»著者プロフィール
著者
閉じる

海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

民主党候補の弾劾論争

 民主党大統領候補指名争いに出馬したバイデン前副大統領は、同党おけるトランプ弾劾論争に参戦することになります。

 すでに出馬宣言をした左派系のエリザベス・ウォーレン上院議員(民主党・マサチューセッツ州)は、「トランプ弾劾手続き開始」を下院に強く求めています。同様に、カマラ・ハリス上院議員(民主党・カリフォルニア州)も「弾劾に向けて行動を起こすべきだ」と主張しています。

 ウォーレン・ハリス両上院議員は、バイデン前副大統領及びバーニー・サンダース上院議員(無所属・バーモント州)に対して支持率で下回っているので、トランプ弾劾に関して強硬な立場をとって、挽回を図ろうとしているのでしょう。つまり、トランプ弾劾を「政治的道具」として利用しているのです。

 サンダース上院議員は、「弾劾は有権者の重要な争点をそらしてしまう」と警告を発し、「逆効果である」と唱えています。オルーク元下院議員もトランプ弾劾について慎重な立場をとっています。彼らに加えて、コリー・ブッカー上院議員(ニュージャージー州)もトランプ弾劾に対して消極的で、「さらなる捜査が必要である」と述べています。

 前回の米大統領選挙において民主党大統領候補であったヒラリー・クリントン元国務長官は、米ワシントン・ポスト紙に投稿し、「好きと嫌いにかかわらず、議会共和党は国を守るために憲法上の責任を共有しなければならない」と主張して同党にクギを刺しました。議会民主党とともに、行政の監視役である議会共和党が機能していない点を指摘しました。さらに、トランプ弾劾の手続きに入るか否かの投票を即座に行うのではなく、その前にロシア疑惑の捜査結果をまとめた「モラー報告書」に関する公聴会を開催することの重要性も強調しています。

バイデンとトランプ弾劾

 米ワシントン・ポスト紙とABCニュースの共同世論調査(2019年4月22-25日実施)によれば、登録した有権者の35%がトランプ大統領の「弾劾手続きを開始するべきである」と回答したのに対して、60%が「弾劾手続きを開始するべきではない」と答え、弾劾否定派が肯定派を25%も上回っています。

 ところが、バイデン前副大統領が獲得を狙っているアフリカ系は、69%が「弾劾手続きを開始するべきである」と回答し、同系では弾劾肯定派が多数派を占めています。しかも、若者(18-29歳)の45%、女性の41%がトランプ弾劾の手続き開始に肯定的であり、全体の数字(35%)を6ポイントから10ポイントもリードしています。

 バイデン前副大統領は、トランプ弾劾を強く支持するアフリカ系の有権者及び同大統領に奪還された米中西部の白人労働者に訴える選挙戦略に出ることは確かです。アフリカ系と白人労働者に若者及び女性を加えた「異文化連合軍」で勝機をつかもうとしています。

 となると、バイデン氏が「トランプ弾劾手続き開始」の立場をとったとしてもまったく不思議ではありません。民主党候補指名争いに出馬した候補の中で、最も高い支持率を維持しているバイデン氏は、すでに本選を見据えた選挙戦略を練っています。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る