2022年8月14日(日)

WEDGE REPORT

2019年6月3日

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布施哲 (ふせ・さとる)

テレビ朝日ワシントン支局長

1997年上智大学法学部卒業、同年テレビ朝日入社。これまで政治部記者として国内政治を取材。防衛大学校総合安全保障研究科修了(国際安全保障学修士)、安倍ジャーナリストフェロー、フルブライト奨学生としてジョージタウン大学、米CSBA(戦略・予算評価センター)での客員フェローを経て現職。関心分野は米中関係、日米同盟、安全保障問題、中国および台湾による米国におけるロビー活動など。主な学術論文や著書に『米軍と人民解放軍』(講談社現代新書)、『対中アクセス拒否戦略』(国際安全保障学会最優秀新人論文賞)、『南シナ海問題の軍事的側面と戦略的意味』(慶應大学)など。

3回目の米朝首脳会談に向けて

 ハノイでの物別れ以降も金委員長への批判を控えているトランプ大統領が、3回目の首脳会談を諦めていないことは明らかだ。トランプ大統領は、北朝鮮による短距離ミサイル発射を問題視せず、腹心のポンペオ国務長官も「そう遠くないうちに3回目の首脳会談ができればいいと思っている」と、一貫して楽観論を展開している。

 一方の北朝鮮側も、ミサイル発射などで緊張を高める行動に出ているものの、その背景にはアメリカを振り向かせる狙いがあると理解していいだろう。

 前述の通り、北朝鮮は、トランプ大統領であるからこそ非核化交渉が成立していることや、トランプ大統領以外で、将来においてアメリカと交渉が進む可能性は限りなく低いことは認識しているはずだ。ポンペオ長官を批判してもトランプ大統領自身に対する批判は注意深く避けているのがその証左だ。

 それらを考慮すれば、再交渉の糸口を探る両者の動きは今後、確実に出てくるだろう。問題はタイミングだ。アメリカの政治カレンダーを見れば、来年に入れば完全に大統領選モードとなるためトランプ大統領が動けるのは常識的には今年中だろう。夏からは民主党内のテレビ討論が始まり、誰がトランプ大統領への挑戦者になるか、という点に世間の注目が移っていく。トランプ大統領の視点から見れば、それを阻止するうえでも、夏休みが終わった秋までには交渉の進展とアピールできる仕掛けを打ち出したいところだろう。

 北朝鮮もそうした米国の事情をよく理解している。金委員長が「今年一杯まで待つ」としているのも、来年になれば大統領選モードになり、米朝交渉は物理的に難しくなることを踏まえてのことだろう。裏返せば、それだけ早期に(今年中に)妥結をはかりたいという意思の表れとも読み取れる。

 あるホワイトハウス関係者は「経済制裁がある限り、時間を味方につけているのはアメリカだ。北朝鮮は時間が経てば経つほど苦しくなってくる」と米朝の立場を指摘する。暗に「大統領は対話に前のめりだが、黙っていても北朝鮮は対話に乗り出してくる」と言わんばかりの言葉だった。

 時間はそれほど多くは残されていない米朝対話。秋にかけて水面下における米朝による駆け引きは活発になっていくだろう。そして、ここワシントンでも「2つのアメリカ」による政治的駆け引きが始まることになる。

  
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