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2019年5月31日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

首相のイラン訪問への期待は本心?

 第2の「?」、イラン問題。

 緊張が高まっているイランと米国の関係を仲介しようと安倍首相がテヘラン訪問を計画していることについて、大統領は会談の冒頭、記者団に「日本がイランと良好な関係にあることは知っている。首相はすでに私にそのことを話した。どういうことになるかみてみよう。イランも対話を望むだろう。われわれもそれを望む」と述べた。

 この発言をもって日本のメディアは大統領が「首相の仲介を歓迎」(朝日新聞)など前向きに報じた。しかし本当にそうか。大統領の発言のニュアンスからは、必ずしも積極的な支持は感じられなかったが。

 トランプ発言は別として、首相のイラン訪問、これに対すると米側の反応については日本のメディアの報道はやや錯綜している。

 5月28日付、産経新聞朝刊1面トップに「大統領 首相のイラン訪問要請」の見出しが踊った。26日夜、両首脳が夕食をともにした高級炉端焼き店で首相が、来日したイランのザリフ外相からテヘラン訪問を要請されたことを伝えると、大統領は「シンゾーしかいない」と応じたという。

 同日の朝日新聞朝刊も「対イラン仲介 板挟み懸念」という記事で、日米政府関係者の話として、「4月にワシントンで行われた日米首脳会談で、トランプ氏から首相にイラン訪問の要請があった」と報じた。

 一方、読売新聞は同日付朝刊で、ザリフ外相の来日以降、政府は首相のイラン訪問への調整を続けてきたとしたうえで、「トランプ氏の支持を得られるかどうかは不確定要素だった。政府は記者の取材にも否定し続けた。米側の反発を招くことを恐れたためだ」――と伝えた。

 産経、朝日は米国が後押ししたといい、読売は、米側の反発を日本政府が懸念した――と伝える逆の内容だ。各紙のニュアンスの違いは、トランプ発言を額面通りに受け取っていいのかとの疑念を抱かざるを得ない。
 
 日本、イラン、米国との過去の因縁も、こうした疑念に拍車をかける。

 イランの核合意について日本は、米国が離脱を表明した後も支持しているが、そもそも、イラン革命以来、米国とイランの関係が悪化したのを尻目に、日本は良好な関係を維持してきた。米国は表面上歓迎しながらも、内心では警戒してきたのではなかったか。

 それを示すのが2010年のアザデガン油田撤退だ。埋蔵量260億バレル、中東最大級の同油田を日本企業連合と「イラン国営石油」が共同開発しようとしたものの、米国の圧力で挫折に追い込まれた。トランプ大統領が昨年、イランへ制裁を再開した際には、イランからの原油を輸入した場合の制裁対象国に、一時期の猶予つきながら日本も指定された。

 米国に〝ハシゴ〟をはずされないようにするためにも、こうした経緯を踏まえて、日イラン関係に対する米国の〝寛容政策〟が本物であるか慎重に見極める必要があろう。

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