WEDGE REPORT

2019年5月31日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

拉致、リップサービスだけか

 残る「?」は、拉致問題だ。

 首脳会談のあと、大統領、首相は北朝鮮による拉致被害者の家族と会った。平成29年11月に続く2回目の面会で大統領は、「みなさんが失った愛する家族をいつも心に刻んでいる。帰国できるようがんばりたい」と決意を伝えた(28日付け産経新聞)。大統領は家族が持参した写真をみて「ハンサムだ」「ビューティフル」などと声をかけたという(読売新聞)。

 金正恩と直接話し合い、拉致問題解決を迫ったトランプ大統領自身からの励ましに家族は勇気づけられただろう。

 それだけに、大統領の口から具体的に、自ら金正恩にどう伝え、先方はどう返答したのか、解決に向けて米国としてどういう手段をとるのか―などについて説明を聞けなかったのは残念だった。

 今年2月、ハノイで行われた第2回米朝首脳会談で、トランプ大統領は2度にわたってこの問題に言及。最初ははぐらかしていた金正恩は、大統領から再度言及があった際、逃げ切れず、安倍首相に会う用意があると応じたと伝えられている。機微に触れる問題であり、詳らかにできない問題であることはわかるが〝声援〟だけで家族に希望を持てといっても無理だろう。家族会代表の飯塚繁雄さんが、面会後の記者会見を途中退席したのも、単に高齢のためだけとは思えなくなる。
 
 首相、菅官房長官らは拉致問題について、「日本の主体的解決」の重要性を繰り返している。米国頼みでは解決できないことを知っているからだ。首相が前提条件なしに日朝首脳会談の実現をめざす考えを繰り返し強調しているのも、そのあらわれだろう。

 安倍―金正恩会談実現に向けた水面下の折衝はどの程度進展しているのか。

 小泉訪朝のように突然、「安倍訪朝」が発表される日がくることを家族は心待ちにしているだろう。 

  
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