Wedge REPORT

2019年6月11日

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社内の様子

 初期の頃、働いていた女性が「私の主人は、殺人教唆の罪で服役しています」と相談してきました。夫が出所後も、女性はうちで働き続けました。夫も塗装業でまじめに働き、夫婦でお金を貯め、田舎に家を買い、移り住みました。こういう姿を見聞きするとうれしいです。

 暴力団に戻ったり、犯罪を繰り返し、服役中の人もいます。刑務所を出るとまた、弊社に働きに来る人もいるのです。私の周りには、常に何らかの犯罪者がいます。怖い? そんなことを感じたのは1度もありません。彼らのほうが、社会や皆さんの視線を怖がっていると思います。

 時折、「なぜ、犯罪者に手を差し伸べるのですか?」と尋ねられます。その都度、「被害者をこれ以上増やしたくないからです」とお答えします。出所後は何らかの仕事について収入を得ないと、同じことを繰り返しかねないのです。刑務所を出たときに、多くの人は手元にお金がほとんどありません。まったくない場合もあります。

 私は働かないのにお金を渡すことはしません。働いたら、その報酬として給与をお支払いします。出所者でも、ほかの従業員と同じく、遅刻や、上司や周囲に迷惑をかける行為には厳しく注意します。この約30年間で言い返してきたのは1人もいません。

 「卒業」し、新天地で認められ、本当の意味で社会復帰してほしい。だからこそ、厳しく言います。私は、いい加減な人には特に厳しいと思います。以前、「こんな仕事はできない」と無責任な辞め方をした出所者がいました。1ヵ月後に「職場が見つからないので、もう1度雇ってください」と頼んできましたが、私はきっぱり断りました。

誰かがやらなければいけないから、しているだけ…

 約50人の中には、覚せい剤吸引の罪で捕まり、出所後にうちで働いていた男性がいました。ある晩、その友人から電話がかかってきたのです。「覚せい剤がなくて、禁断症状が出て暴れている」。

 私は主人と一緒に急いで、彼が住むアパートへ行きました。彼は壁に頭を打ちつけ、暴れまわっています。友人と主人と私の3人で布団にくるんで押さえつけました。朝になると、症状が落ち着き、彼は寝入ります。仕事をしているときは覚せい剤を打っている様子はなかったのですが、実際は止めることができなかったのでしょうね。彼は今、刑務所に入っているようです。

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