中学受験におけるお父さんの役割は
世の中について教えてあげること
成長途中の段階にいる小学生が挑む中学受験は、成熟度が高い子ほど有利だと言われています。成熟度が高い子というのは、大人と会話ができる子です。幼いときから、大人の会話に首をつっこむ子は、大人の言葉を耳にし、大人の考えを知ることができます。すると、自然と成熟度も上がってきます。
ところが、今の小学生の子どもの世界は、学校と塾と習い事で完結してしまいがちです。特に中学受験の勉強が始まると、塾で過ごす時間の割合が大きく占め、それ以外の世界を知る機会があまりありません。
そこでお父さんの出番というわけですが、自分だけで教える必要はありません。
例えば、国語の素材文にはよく戦争の話が出てきます。特に2019年度の上位女子校の国語入試では、戦争をテーマにした物語文や説明的文章の出題が多く見られました。
小学生の親世代は戦争を体験してないので、自分のこととして伝えることができない。祖父母世代でも経験されていない方も多いでしょう。しかし、現在放映中の朝ドラ「なつぞら」のヒロイン「なっちゃん」は戦災孤児、5〜6歳で終戦を迎えていますから、同世代(79歳くらい)以上の方は記憶にあるのではないでしょうか。その世代のおじいちゃんやおばあちゃんがご健在であれば、教えてもらうことはできるかもしれません。子どもはかつて日本が戦争をしていたことは知っていても、自分の身内が体験しているという意識はあまり持っていません。戦争について何か調べるときに、本やインターネットを使って調べるという方法は知っていても、自分のおじいちゃん、おばあちゃんに聞くという発想にはならないのです。そんなときは、お父さんが提案してあげてください。生の体験ほど説得力のあるものはありません。
また家にお客様がみえた時もチャンスです。そのとき、子どもだからといっていつも席を外させるのではなく、ときには一緒に交えてあげてください。そうやってたくさんの大人と出会わせてあげることも大切です。
我が家ではよく子どもたちに私の大好きだった昭和時代の話を聞かせていました。高度経済成長の真只中に生まれて、日本の成長も活力も、そしてまだあった貧困も近くで見てきたそのままを伝えていました。成長してから「お父さん、昭和っていい時代だね」と子どもたちは言います。昭和という時代の「遺伝子」が、少しだけですが新しい世代に伝わったかと。
是非お父さんが生きてきた中での経験を子どもたちに伝えてあげてください。
これは、中学受験に限らず、子どもを成長させる上で最も大切なお父さんの役割だと私は感じています。
「お父さん」が子どもに一番伝えたいのは、どんな時代になっても力強く生きていく、そんな力ではないでしょうか。
(構成・石渡真由美)
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